(ブルームバーグ):トランプ米大統領が仕掛けた貿易戦争に端を発したボラティリティーからの避難先を求める新興国市場の投資家は、世界的な金利低下を見越した戦略に注目している。
利回りが高く、長期にわたる世界的な貿易戦争において、中央銀行が金融緩和を行う余地が十分にある新興国の現地通貨建て債に着目した戦略だ。
このところ相場が乱高下する中で、新興国資産は悪くないパフォーマンスを記録。米株式相場は急落し、S&P500種株価指数は2020年3月以来で最も急激な2日間の下げとなり、5兆ドル(約740兆円)の時価総額が消失した。
一方、新興国の現地通貨建て債を対象としたブルームバーグの指数は4日終了週に約1カ月ぶりの大きな週間上昇率となり、年初来の上げを拡大した。

ナインティー・ワンの新興国ソブリン債・通貨共同責任者グラント・ウェブスター氏は、「今後成長見通しが弱まる中で、新興国の中銀は緩和の余地がかなり多く残されている」と指摘した。
MSCIの新興国株指数は7日、年初来の上げを帳消しにしたが、今年に入り10%余り下げているS&P500種よりは堅調だ。新興国通貨の指数が上げる一方、ドルは値下がりしている。
ラザード・アセット・マネジメントの新興国市場債共同責任者アリフ・ジョシ氏は、ドル安見通しが一部新興国の現地通貨建て債の魅力を高めていると分析。
トルコでは慢性的なインフレから資産の目減りを防ぐため自国通貨建ての貯蓄をドルに両替するという傾向が長年続いていたが、ドルへの換金が増えるとの懸念がドル安によって弱まっていると説明した。
こうしたことを背景に 「トルコ中銀が夏にかけて利下げサイクルに戻る余地が大きくなっている」との見方を示した。
トルコ10年国債利回りは約33%。ジョシ氏は10年債利回りがそれぞれ15%と9%近辺のブラジルとメキシコの現地通貨建て債にも強気だという。
新興国市場の投資家は、現地通貨建て債取引でこれまで何度も期待を裏切られており、この資産クラスのターニングポイントが到来するという繰り返しなされてきた主張は実現していない。
今回は、世界経済がどれほど悪化するかによって、新興国市場の行方が決まる可能性がある。米国のリセッション(景気後退)懸念が深刻化すれば、世界中でリスク選好がしぼみ、投資家は新興国市場のようなリスクの高い資産から撤退せざるを得なくなるだろう。
米経済が予想よりも好調である場合や、ホワイトハウスが関税政策を緩和する場合も、新興国の現地通貨建て債の値上がりを見込んだ戦略に悪影響を及ぼす可能性があるほか、米国に反発する国による報復措置によっても見通しが変わり得る。
ただ、グランサム・マヨ・バン・オッタールー(GMO)の新興国市場債責任者ティナ・バンダースティール氏らは、少なくとも一時的な避難先として新興国市場に期待している。
「この混乱の中で、もし新興国市場の現地通貨建て債が相対的な安全資産となるのであれば、皮肉なことだ」と同氏は話した。
原題:Global Rate Bets Offer EM Investors Refuge From Trump Shock (2)(抜粋)
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