(ブルームバーグ):富国生命保険は資産運用で、株式や債券などの伝統的資産に代わるオルタナティブ(代替)資産への投資を積極化する方針だ。ヘッジファンドやプライベートクレジットなどに投資し、今後3年で残高を現在の約2倍の2000億円規模に増やす。
1日付で就任した渡部毅彦社長がインタビューで述べた。内外の金融市場が大きく変動する中、長期的視点から比較的高い運用収益を見込み、分散投資を進める。一方、米関税政策を受け日本銀行の利上げは「難しい判断になる」との見方も示した。
渡部氏はオルタナ投資拡大などにより「3年間で運用をギアチェンジ」して収益性を高めていくと説明した。ただ、基本的に長期・分散投資の姿勢は崩さず、例えばヘッジファンド運用では5年、10年、またはそれ以上の長期スタンスで収益確保を目指すという。
オルタナ資産は株や債券と違い、金融市場の動きに大きく左右されにくいなどの特徴がある。富国生命は米金利高の局面で米国債券の為替ヘッジをゼロにするなど機動的な運用を試みてきたが、オルタナでも柔軟な運用により収益拡大を狙う。
2024年12月末の資産構成は、有価証券約6兆1900億円のうち国内債券が約2兆8000億円、国内株式が約1兆円、外国債券が約1兆4700億円。国内債の含み損は約900億円ある。ヘッジファンドなどのオルタナ資産は約900億円となっている。
20年国債2%台なら「買い」
当面の国内金融政策に関連して渡部氏は、「米トランプ政権の関税問題などで日銀としては非常に難しい判断になる」と分析。米関税政策に対する日本政府の判断や国内経済への影響が不透明で、年度内に2回を見込む同社の現時点での利上げ見通しは、今すぐ変えるようなタイミングではないとの認識を示した。
日本国債への投資については、例えば、20年国債なら利回りが2%を安定的に超えている水準であれば購入可能だとし、為替リスクを考慮しながら外債を購入するより好判断になると分析する。同社の国内債は含み損が他の大手生保に比べて少なく、長期国債などの購入余力は「他社よりある」と述べた。
渡部氏は1990年代から2000年代前半までエコノミストとして経済動向の分析などを行い、09年に資産運用計画の策定や収益を管理する財務企画部の部長に就任。その後も財務企画担当の役員を務めるなど資産運用部門の経験が長い。
1日公表の中期経営計画では27年度の基礎利益を1200億円と24年度から約2割増やす計画。他の大手生保のように合併・買収(M&A)戦略は取らず、既存の保険事業と運用力の強化で成長を目指す。渡部氏は資産運用の成果もあり自己資本も拡充できたため「お客さまにとって魅力のある商品を出せるようになってきた」と述べた。
(中期経営計画などについて追加し更新します)
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