(ブルームバーグ):7日の米株式市場ではS&P500種株価指数が小幅ながら3日続落。トランプ大統領が始めた貿易戦争に関する新たな報道が相次ぎ、再び不安定な相場展開となった。
何兆ドルもの時価総額が吹き飛んだ下落局面後の底値を模索する中、この日も相場は乱高下した。S&P500種は弱気相場の領域に入る場面もあったが、その後の7%を超える荒い値動きは新型コロナウイルスが世界市場を混乱させた2020年以降で最大となった。
トランプ大統領は中国が米国製品に対する34%の報復関税を撤回しない場合、「50%の追加関税を課す」と警告した。一方、日本とイスラエルとは交渉の用意があることを示した。
90日間の関税一時停止が検討されているとの報道が流れ、ボラティリティーが急上昇した。この報道はホワイトハウスが否定した。欧州連合(EU)は一部の米国製品に対して25%の対抗関税を提案している。
市場が混乱する中、ウォール街の重鎮から真剣な警告が相次いだ。米投資会社パーシング・スクエアの創業者、ビル・アックマン氏は米国は「自らを経済的な核の冬に向かわせている」と発言。 ヘッジファンドのサバ・キャピタル・マネジメント創業者ボアズ・ワインスタイン氏は、「雪崩はまだ始まったばかりだ」と述べた。JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は米国が長く築いてきた経済的な結び付きが「悲惨に」分断されるリスクを警告した。
Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「当面、ワシントン発のニュースが市場の変動を左右し続けるだろう」と指摘。「過去数十年間には、相場がいくつかの注目すべき安値を付ける前に同様の荒い値動きが見られたが、価格がいつ底を打つかは常に予測不可能だ」と述べた。
ミラー・タバクのマット・メイリー氏は、株式相場のV字回復期待は恐らくかなり失望させられるとの見解を示した。「いずれは力強い反発が見られるはずだが、現実的な経済見通しに合わせた価格調整には時間がかかる。下落の最悪期を脱したことがより明白になった時点で、積極的な行動に出る時間はいくらでもある」と語った。
BTIGのジョナサン・クリンスキー氏は「多くの指標が、過去40年間の著しい底値を連想させるパニックレベルにある」と述べた。「全面降伏の域に入った時、可能性が高いあるいは可能性があると考えられる以上に相場は動くことが多く、それが問題だ」と話した。
米国債
米国債は下落(利回りは上昇)。荒い値動きとなる中、全ての年限で利回りは少なくとも10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇した。利回りは早朝に低下していたが、上昇に転じた。
年内の米利下げ回数予想は0.25ポイントの利下げが3-5回で揺れている。オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場では現在、年内4回の利下げを見込んでいる。最初の利下げが完全に織り込まれているのは6月で、米連邦準備制度理事会(FRB)が次回の政策会合を待たずに緊急利下げに動く可能性は現時点で極めて低いとみられている。
これより早い時間には、リスク回避の動きが強まる中で米利下げの織り込みが急激に進み、来週までに0.25ポイント利下げに踏み切るとの予想が約40%に達していた。
メディオラナム・インターナショナル・ファンズの債券部門責任者、ダニエル・ラフニー氏は「当社としては、ここで利益を一部確定させるか、そのまま状況を見守るかが問題だ」と指摘。「現時点では、市場の構造自体は健全に保たれている」とし、トランプ大統領が関税に関して強硬な主張を貫けば、状況は今後さらに悪化し得ると述べた。
外為
ニューヨーク外国為替市場ではドル指数が続伸。トランプ政権の関税に関する報道に反応した。
ハセット米国家経済会議(NEC)委員長の発言が関税の一時停止を支持するものと解釈されたため、一時ドルの上値が重くなったが、すぐにホワイトハウスによって否定された。
ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループの外国為替責任者、ブラッド・ベクテル氏は「トランプ氏自身が発言しない限り、ニュースを基に取引しない方がいい」と指摘。「ドルが広範囲にさらに下落する余地はあまりないだろう」と述べた。
ドル相場の変動に対するヘッジ需要が拡大し、ヘッジコストは昨年11月のドナルド・トランプ氏の大統領選当選以来、最高水準にまで上昇した。
対ドルの円相場は午前中に下げに転じ、一時は1ドル=148円15銭まで下げた。石破茂首相はトランプ大統領と電話会談を行い、関税措置を巡って担当閣僚を指名した上で二国間で協議することを確認した。
原油
ニューヨーク原油先物相場は3営業日続落。トランプ大統領の関税政策の行方を巡り不透明感が根強い中、4年ぶりの安値に沈んだ。
トランプ政権が関税の一時停止を検討しているとの一部報道を受けて、原油価格は跳ね上がる場面もあったが、その後ホワイトハウスが報道内容を否定すると、再び下落した。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物はここ3営業日で16%下落している。トランプ氏の関税政策が世界のエネルギー需要に悪影響を及ぼすとの懸念に加え、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」による予想以上の増産発表が供給過剰懸念を強め、原油安に拍車をかけている。トランプ氏はこの日、中国が米国製品に対する34%の報復関税を撤回しない場合、50%の追加関税を課すと警告した。
トレイシー・アレン、ナターシャ・カネバ両氏らJPモルガン・チェースのアナリスト陣は、トランプ氏の関税は「最もタカ派の予想すらも上回る内容で、景気に敏感なコモディティー(商品)を筆頭に金融市場は米経済、おそらく世界経済についても景気後退をより有意に織り込み始めている」とリポートで述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物5月限は、前営業日比1.29ドル(2.1%)安い1バレル=60.70ドルで引けた。ロンドンICEの北海ブレント6月限は2.1%下げて64.21ドル。
金
金スポット価格は3日続落。トランプ米大統領の関税政策に関連する一連の報道が材料視された。
金は一時2.7%まで下げ幅を広げる場面があった。
TDセキュリティーズのシニア商品ストラテジスト、ダニエル・ガリ氏は、金は依然として「買われ過ぎ」の状態にあり、「レバレッジ解消が顕著なリスクになっている」とリポートで述べた。
トランプ氏が相互関税を発表して以降、金は他の資産とともに売られる流れが続いている。
金スポット価格はニューヨーク時間午後3時30分現在、前営業日比64.29ドル下げて1オンス=2973.95ドル。COMEXの金先物6月限は61.80ドル(2.0%)安い2973.60ドルで引けた。
原題:Stocks Hit by Dizzying Swings as Bond Yields Surge: Markets Wrap(抜粋)
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--取材協力:Robert Brand、Julien Ponthus、Anand Krishnamoorthy、Richard Henderson.
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