世界最大の世襲資産家の9代目であるフレデリック・ド・メビウス氏が、10年以上住んだ英国を離れ、母国のベルギーに居を移したことが分かった。

登記簿によると、醸造大手ABインベブ創業家3家の一つに属するド・メビウス氏(66)は、この半年の間にベルギーに移った。同氏の代理人はコメント要請に応じなかった。

2024年初めごろから富裕層が英国を離れ始めた。エジプトの大富豪ナセル・サウィリ氏を含む欧州、中東、アフリカ出身の富裕層が英国を去った。

富裕層を不安にさせたのは、非永住者向けの優遇税制の廃止だ。いわゆる「ノンドム(英国非永住者)」は海外所得に対する英国での課税を最大15年間回避できたが、1799年に制定されたこの制度は5日に廃止された。

ポーランドを拠点に富裕層向けの税務および移住アドバイザーを務めるデービッド・レスペランス氏は、英国在住の富裕層の国外への流出について、「小さな流れが大きな波になりつつある」と述べた。

最新の公式データによると、英国にはおよそ7万5000人のノンドムがおり、年間80億ポンド(約1兆5000億円)以上の税金を納めていた。

英財務省は、ノンドム向け税制の改革が財政を改善させると考えている。しかし他のリポートは、変更により英国は年間およそ10億ポンドの税収を失うだろうと警告している。

ノンドム制度廃止直前に経済シンクタンクのアダム・スミス研究所は、今後10年間で英国が1110億ポンドの税収を失う可能性があるという研究結果を発表した。

原題:Going, Going, Gone: UK Non-Dom Exits Quicken After Tax Perk Ends(抜粋)

--取材協力:Alex Dooler、Devon Pendleton、Ben Bartenstein、Pamela Barbaglia.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.