カナダ人は今、一杯飲みたい気分だ。

トランプ米大統領がカナダ製品に追加関税をかけると威嚇し、必要なら「経済力」でカナダを51番目の州にするとまで言い出した11月以降、カナダは緊張状態にある。

米国からの圧力の中、カナダ最古の独立系ビールメーカー、ムースヘッド・ブルワリーズは、トランプ大統領の在任日数と同じ1461缶入りのビールセット「大統領パック」を発売した。発売から11分で最初の1セットが売れ、現在、400人以上の購入希望者が待機リストに登録している。

ビールパックは送料込みで約3500カナダドル(約36万6500円)。幅、高さが約1.2メートルの木箱に入っており、重量は約862キログラムと、コンサート用グランドピアノ2台分ほどになる。

箱には「おめでとう。これで2029年まで、あとビール1461本に近づいた。今後4年間がどうなるかは予測できない。ただ、25年の始まり方を考えると、このたくさんのビールがきっと役に立つだろう」とのメッセージが書かれている。

ムースヘッドの広報担当者によると、同社はこれまで、大統領パックを10セット販売した。家族経営のこの醸造所が需要に応えられるかは、「物流的に不明」という。

トランプ米大統領がカナダに追加関税を課し、同国が51番目の州になるべきだと発言する中、4月の総選挙に向け、カナダ保守党ポワリエーブル党首と自由党党首のカーニー党首が舌戦を繰り広げている。

ムースヘッドの大統領パックは、カナダ製品を購入し、米国製品を敬遠するというカナダの全国的なキャンペーンに沿ったものだ。カナダ企業はこれを商機とみている。トランプ氏がほとんどのカナダ製品に課税するとしている税率になぞらえ25%の割引を提供したり、米国製品を避けたい消費者のために、わかりやすいラベルを貼ったりしている。

酒類もまた微妙な問題である。カナダ国内の酒類流通は州政府が管理しており、米国の関税に対する報復措置として、今月多くの店舗から米国産のアルコール類が撤去された。両国のビールメーカーの苦境に追い打ちをかけているのが、トランプ氏が25%のアルミニウム関税を発動したことに伴うアルミ製のふたや缶の価格上昇だ。

ムースヘッドは、カナダが建国された1867年に、東部のニューブランズウィック州で創業した。6世代にわたりオランド家が経営する同社は、禁酒法時代、世界大恐慌、2度の世界大戦、そして150年以上にわたる断続的な貿易障壁を乗り越えてきた。

大統領パックは、そんなムースヘッドが経済的不確実性に対処するための取り組みでもある。

同社は今月の広報文で、「4年は長いように思えるかもしれないが、私たちはいつも通り、一緒に前進していく。1日ずつ、そして1杯ずつ、頑張った後のビールを味わいながら」と呼びかけている。

原題:Canadians Sign Up for 1,461-Pack of Beer to Endure Trump’s Term(抜粋)

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