(ブルームバーグ):JR東日本やJR西日本など鉄道会社の株価が好調だ。訪日外国人旅行客の復活と運賃値上げで収益が改善するとの期待が高まっており、4月中旬から大阪で始まる万国博覧会(万博)の開催で新幹線の利用者がさらに増えるとの見方も浮上する。
鉄道株を含む東証33業種の陸運業指数は年初来6.3%上昇し、1.3%安の東証株価指数(TOPIX)をアウトパフォームしている。個別では東北・上越・北陸新幹線を運行するJR東日本が10%高、山陽新幹線のJR西日本が8.4%高。東海道新幹線のJR東海も2.3%高と陸運業指数には及ばないが、TOPIXを上回る。
米国のトランプ政権が繰り出す関税政策で世界経済の不確実性が高まる中、投資家の目がグローバル企業よりも内需セクターに向かいやすくなっていることが鉄道株が強い要因の一つだ。また、新型コロナウイルスのショックが癒え、外国人を中心とした旅行需要の完全復活や運賃値上げの動きが相次ぐなど業界を取り巻く事業環境の好転も投資マネーが流入する背景にある。
1月の訪日外国人客数は378万1200人と前年同月比40%以上増え、月間では過去最多を記録した。国内旅行会社最大手のJTBによると、今年の日本人の総旅行人数も3億1910万人と前年比2.9%増が見込まれている。一方、4月からJR西日本やJR九州、JR北海道が運賃の値上げを実施し、JR東日本も2026年3月からの運賃改定に向け国土交通相に既に申請済みだ。
大阪ベイエリアの舞洲で4月13日から半年間にわたって開かれる大阪・関西万博を材料視する向きもある。
しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーは「万博が盛り上がってくると、関連銘柄として物色される可能性がある」と指摘。株価収益率(PER)など鉄道株のバリュエーションは割安ではないものの、事業環境が改善すれば、株価はさらに上昇する余地があるとみている。
もっとも、米経済の減速やそれに伴い為替市場でドル安・円高が進んだ場合、訪日外国人客が減少する可能性がある点は鉄道株にとってリスクだ。ただし、同じ運輸業界でも空運業に比べると国際情勢の影響を受けにくく、鉄道各社が沿線で資産価値の高い不動産を多数保有し、開発も手がけるなど不動産会社としての側面を持つことは株価を支える要因になるとの見方もある。
実際、新型コロナの流行が世界を襲った20-23年の33業種のパフォーマンスを見ると、空運は18%安と下落率トップ。陸運も2位だったが、下落率は9.5%とおよそ半分にとどまった。
CLSA証券と野村証券は今月、運賃の値上げや品川地区の再開発、不動産販売の増加などを理由にJR東日本の投資判断を「買い」に引き上げた。CLSAのアナリスト、トム・オーディス氏は運賃の値上げが同社の収益に大きな影響を与える可能性があると指摘した。
ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、デニス・ウォン氏も鉄道会社の輸送需要は安定した国内顧客基盤とインバウンドの成長に支えられると予測し、一等地の土地や不動産の隠れた価値を引き出す潜在力も評価している。ブルームバーグのデータによると、JR東日本の売上高の約15%を不動産・ホテル事業が占める。
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