2月の米小売売上高は市場予想を下回る伸びにとどまった。1月分は下方修正された。個人消費の後退を巡る懸念が強まりそうだ。

自動車を除いたベースでは0.3%増加した。統計発表後に米2年債利回りは上昇。円は対ドルで下落した。その後、同利回りは上げ幅を縮小し、円は下げを埋めた。

この日別に発表された、ニューヨーク連銀製造業景況指数は2024年1月以来の水準に低下。米住宅建設業者の業況感を示す住宅市場指数は昨年8月以来7カ月ぶりの水準に沈んだ。

パンテオン・マクロエコノミクスのチーフ米国エコノミスト、サミュエル・トムズ氏は「雇用不安から消費者が貯蓄を厚くして備えるとみられ、成長がもっと弱くなるリスクが高まっている」と述べた。

棒グラフ:小売売上高、折れ線グラフ:食品とガソリン、建築資材、自動車を除いた小売売上高

トランプ大統領が主要貿易相手国からの輸入品に関税を課し、これが物価を押し上げる可能性が高くなっている現在、財の占める割合が大きい小売売上高の統計は重要性を増している。エコノミストの間ではここ数週間、成長予想の下方修正が相次いでいる。

今回の統計は深刻な消費後退を示しているわけではないが、財への支出の弱さを示唆する。消費者センチメントが悪化し、金融ストレスの兆候が強まるのに伴い、企業や投資家、エコノミストは見通しに関して慎重になっている。

低所得層の消費者は既に家計が苦しくなっており、富裕層も最近の株式相場下落で投資を手控え、出費を抑える可能性がある。

国内総生産(GDP)の算出に使用される飲食店と自動車ディーラー、建設資材店、ガソリンスタンドを除いたコア売上高(コントロールグループ)は1%増加した。前月は減少していた。電子商取引活動の回復が寄与した。

GDP縮小の可能性

インフレーション・インサイツのオメイア・シャリフ社長はコア売上高について、1-3月(第1四半期)GDPの支えにはなるとしつつ、増加は季節調整の問題によるところが大きいと指摘。他のエコノミストも最近の消費者および企業センチメントの指標がより悲観的に転じていることから、見通しが一段と懸念されると指摘した。

ハイ・フリークエンシー・エコノミクスのカール・ワインバーグ、メアリー・チェン両氏はリポートで「1-3月のGDPは縮小する可能性が高いことを今回の統計は示している」と記述。「最低でもGDP成長率の低下は確実だ」と続けた。

2月は13分野のうち7分野で小売売上高が減少。特に自動車は1月の落ち込みからの持ち直しが期待されていたが、2月も低迷が続いた。ガソリンや電気製品、衣料品の売上高も減少した。この統計で唯一サービス分野に分類される飲食店は、1年ぶりの大幅減となった。

ディスカウントストアのターゲットや家電量販店のベスト・バイなどは関税を理由に値上げを強いられる可能性があるとしている。また百貨店のコールズやスポーツ用品小売りのディックス・スポーティング・グッズなどは低調な見通しを示しており、米個人消費の強さに疑問を投げかけている。

小売売上高の数字はインフレ調整されておらず、消費者支出全体に占める比率が比較的小さい財の購入をおおむね反映している。インフレ調整後の財・サービスへの支出に関する2月のデータは今月下旬に発表される。

統計の詳細は表をご覧ください。

原題:Disappointing Retail Sales Add to Concerns About US Outlook、US Retail Sales Rise by Less Than Forecast After January Drop(抜粋)

(エコノミストの見解を追加し更新します)

--取材協力:Chris Middleton.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.