年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、サステナビリティー(持続可能性)投資に関する方針を初めて策定し、次期基本ポートフォリオ(資産構成割合)と併せて今月末に公表する方向で調整に入った。社会課題の解決と収益性の両立を図る「インパクト投資」も含め、ESG(環境・社会・企業統治)に対する姿勢を明確化する。

事情に詳しい複数の関係者が、ブルームバーグの取材に明らかにした。GPIFは毎年、ESGに関する過年度の活動報告を取りまとめていたが、中長期的な視点に立った包括方針は明確にしていなかった。政府が公表したアセットオーナーに対する行動規範を踏まえ対応した。

世界最大級の年金基金であるGPIFは2015年に国連の責任投資原則(PRI)に署名して以降、ESGへの取り組みを拡大してきた。24年3月末時点で、国内外の株式投資124兆円余りのうち約14%がESG指数に基づいた運用だ。

足元ではESGを巡るGPIFの投資環境に変化がみられる。年金加入者の利益以外を追求してはならないとの制約から従来できなかったインパクト投資が、解釈を広げる形で可能になったのはその一例だ。新たに方針を掲げることで、GPIFのサステナビリティー投資への向き合い方を内外に示すことができるようになる。

一方、世界的にもESGの潮流が変わりつつある現状がある。米国のトランプ大統領が反ESG色を鮮明にしているほか、気候変動対策を促す国際団体からは米国や日本の主要金融機関が脱退しており、一時の盛り上がりは鳴りを潜めている。

政府は昨年8月、当時の岸田文雄首相が掲げた「資産運用立国」実現に向けた取り組みの一環で、公的年金などのアセットオーナーに対する行動規範を公表。企業の持続的成長を促す観点から、サステナビリティーに関する投資方針の策定などを求めていた。

GPIFの広報担当者はサステナビリティー投資に関する方針について、アセットオーナーの行動規範を踏まえて策定を進めているとした一方、公表時期については検討中と回答した。

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