ベビーブーマー世代にとって、非常に悪いタイミングで米株価が下落している。

S&P500種株価指数は、リセッション(景気後退)や貿易戦争のリスクへの懸念から、最近の高値からの下落率が10%に達した。運用資産の目減りを経験したくないのは皆同じだが、特にベビーブーマー世代の投資資産が縮小し続けた場合、経済的影響は深刻化しかねない。

1946-64年の間に生まれたベビーブーマー世代の多くが、退職後の年数が浅いか、退職の準備中だ。生活費のため資金の引き出しを求められる一方で、大きな損失を持続的に被ると、そのポートフォリオは二度と完全には回復しない公算が大きい。

専門家が「収益率の順序リスク(sequence of return risk)」と呼ぶものだ。

ビーコン・ヒル・プライベート・ウェルスの創設者、トーマス・ゲイガン氏は「資金を引き出しながら早期に損失が発生すると、ポートフォリオの寿命に深刻な影響を及ぼす可能性がある」と説明。「最も大きいのに最も過小評価されている退職後のリスクの一つだ」と指摘した。

ポートフォリオの資金が株式に大きく投じられた状況で、退職後年数の浅い人が長引く相場下落時に定期的に引き出しを行う場合、最も危険な状況となる。

相場下落局面での資産売却に伴い、打撃を受けた投資が一段と縮小。最終的に相場が回復しても、残された資産の規模では、ポートフォリオを完全に回復させるには不十分だ。

最近の下落が長引き、多くのベビーブーマーがこうした事態に見舞われた場合、米経済への影響も顕在化する恐れがある。ベビーブーマーが退職後の生活全般で支出を切り詰めがちとなるほか、生活費を賄うため資産売却を拡大せざるを得なくなる可能性もある。

 

原題:Baby Boomer Retirement Accounts Risk Long-Term Hit in Stock Rout(抜粋)

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