「今すぐ立ち去れ。さもなくばわれわれが見つけ出す」。米国では目下、テレビや動画配信プラットフォーム、ソーシャルメディアで、このメッセージが流れている。

不法移民の自発的な出国を促すため、トランプ政権が2億ドル(約295億円)を投じて行っている広告キャンペーンだ。不法移民の摘発と強制送還を進めていたトランプ大統領だが、ロジスティックと資金の両面で限界に直面したことで戦略を切り替えている。

今回の取り組みでは広告攻勢のほか、自主的な出国を促すアプリの提供も始めた。ノーム国土安全保障長官は、出国しない者は身柄を拘束され、二度と米国への入国が許されないとの警告を発している。

「今すぐ立ち去れ。さもなくばわれわれが見つけ出し、強制送還する」と、ノーム氏は国内向けの広告で警告している。国外向けの広告では、米国への移住を目指す層を念頭に「それについて考えることすらすべきではない」と述べ、「はっきり言っておくが、米国に来て法律を破れば、われわれは追い詰めて捕まえる」と続けた。

トランプ政権は発足直後から、多額の費用をつぎ込んで不法移民の一斉検挙と強制送還を強力に進めた。全米各地で行われた取り締まりの様子は大きな注目を集め、軍用機も含め不法移民を乗せた複数の機体が中南米やインドに向けて出発した。移民・税関捜査局(ICE)はそれ以降、およそ3万3000人の逮捕者を報告している。だが、そのペースは足元で鈍化しており、同局では指導部の交代が続いた。トランプ大統領は取り締まりを強化するため、さらなる予算を承認するよう議会に強く求めている。

広告調査会社アドインパクトのデータによると、国土安全保障省は全米で幅広く広告を展開するため、これまでに約240万ドルを投じている。対象地域には、ニューヨークやダラス・フォートワース、アリゾナ州フェニックス、ロサンゼルスなどの大都市圏に加え、テキサス州の国境付近地域といった遠隔地も含まれる。複数の言語で展開されている政府の広告では、移民の逮捕現場や犯罪容疑で逮捕された移民の顔写真、トランプ大統領が国境に立つ映像などを印象的に織り交ぜた構成となっている。

トランプ政権は今週、米国内の不法移民が自主的に国外退去するための「CBPホーム」アプリの提供を開始すると発表した。同アプリの前身は移民が合法的に国境検問所で入国申請の予約を行えるようバイデン政権が提供していた「CBPワン」で、今回の取り組みにあたり全面的に刷新した。トランプ氏は就任直後にCBPワンを廃止。保留中の予約をすべて取り消し、亡命申請者の主要な手段を断ち切った。

ノーム長官は「CBPホームは不法移民が直ちに出国し、自主退去する選択肢を提供する。そのため、将来合法的に戻ってきてアメリカンドリームを実現する機会がまだあるかもしれない」と声明文で説明。「従わなければ、われわれが見つけ出して強制送還する。二度と戻って来られないだろう」と続けた。

原題:Trump Turns to Self-Deportation Campaign as Mass Raids Falter(抜粋)

--取材協力:Chris Palmeri、Romy Varghese.

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