2025年度予算案が衆議院で可決された。自民・公明両党は、国民民主党が掲げる所得減税を一部取り入れるなど、複数の野党と交渉。2025年度からの高校授業料の無償化が決め手となり、日本維新の会と合意した。政府の当初予算案は29年ぶりに国会審議で修正されたものの、政府は引き続き年度内の予算成立を目指す構えだ。

授業料無償化は教育費負担の軽減を通じて教育の機会均等に資するほか、物価の押し下げにも作用する。昨年4月に東京都で先行して高校授業料が無償化された際には、同月の東京都区部コアCPI(生鮮食品を除く総合)を前年比▲0.5%ポイント下押しした。同ケースを参考に今回の政策が全国のコアCPIに与える効果を試算すると、2025年度に▲0.24%ポイント、2026年度に▲0.19%ポイントの下押しとなる見込みだ。これにより実質賃金の伸びは一定程度上押しされるものの、同政策による負担軽減効果は高校生の子どもを持つ世帯に限定される。


授業料無償化の財源は予備費からねん出され、恒久財源は確保されず。先行きの予算・法案審議において野党からの歳出拡大要求が高まれば、市場で財政リスクが意識されやすくなる可能性もある。長期金利が上昇しているだけに、財源論を伴う政策論議が必要だ。

(※情報提供、記事執筆:日本総合研究所 調査部 研究員 藤本一輝、後藤俊平)