英金融行動監視機構(FCA)は急成長しているプライベート市場について、資産評価において深刻な利益相反や記録管理の不備、ボラティリティーの補正など不適切な慣行が横行し得ると警告した。報告書が5日に発表された。

FCAの調査によると、評価委員会の議事録には、決定がどのように下されたのかが記録されていないことがしばしばもあった。また、割引率など評価モデルの主要な変更について、根拠が「曖昧」だったものもあったという。

36のプライベートエクイティー(PE、未公開株)とベンチャーキャピタル(VC)、プライベートクレジット、インフラ担当ファンドマネジャー、アドバイザーの業務に関する報告書全体で、利益相反を適切に特定し管理できていないことが繰り返し指摘された。

FCAは「評価に関連する潜在的な利益相反の全てについて、われわれが期待していたような強い認識を持ち管理を行っていた企業はわずかだった」と説明。

「手数料や報酬に関して競合する利害関係は全ての企業が認識していた一方、その他の潜在的な利益相反については部分的にしか認識・文書化されていなかった」と明らかにした。

欧州最大のプライベート市場を監督するFCAは、一貫性のない慣行に対する懸念から、昨年夏に業界での資産評価に関する広範な見直しを開始した。

また、金利上昇後に金融工学の利用が増加していることについても当局は懸念している。隠れているレバレッジが一斉に解消された場合、金融セクター全体に影響が及ぶ恐れがあるためだ。

 

証券規制基準を定める国際機関である証券監督者国際機構(IOSCO)や米証券取引委員会(SEC)、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(英中銀)などの監視機関は、以前からプライベート市場における評価の問題と、予期せぬ相場急落が世界の金融安定に及ぼす潜在的な脅威に触れてきた。

FCAは、企業が控えめな評価額を報告して時間の経過による変動リスクを抑えたり、償還時に値上がりしている可能性を高めたりしている例を幾つか確認しているという。

「評価額の安定性を誇張することは、リスクの真のレベルや投資資産の現在の価値を不明瞭にすることで、投資家を害することにもなり得る」とFCAは警鐘を鳴らした。

ポートフォリオを担保とした純資産価値に基づく資金調達は、この業界では広く普及している。資産の評価額が高ければより低利でより多く借り入れのが可能になるが、ほとんどの企業がこのことが引き起こす潜在的な利害の対立を特定・文書化していないとFCAは指摘した。

「適切な評価慣行は、市場が成長する中で公正性と信頼性を維持する鍵となる」と、FCAのホールセールバイサイド部門ディレクターであるカミーユ・ブラックバーン氏は論じている。

原題:Private Markets Fail to Police Conflicts of Interest, UK Finds(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.