欧州連合(EU)は米国との貿易戦争回避に向け、自動車などの関税引き下げについて協議する用意があると、セフショビチ欧州委員(通商担当)が19日、首都ワシントンで述べた。

同氏は保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)で、「われわれは例えば工業製品に対する関税の引き下げないし撤廃について話し合う用意がある」と発言。「自動車関税についても検討する準備ができている」と述べた。

セフショビチ氏はトランプ大統領の通商チームと協議するためワシントンを訪れており、19日にはラトニック商務長官と通商代表部(USTR)代表候補のジェミソン・グリア氏、ホワイトハウスのハセット国家経済会議(NEC)委員長と会談する予定。

セフショビチ氏は関税を巡る対立の激化を回避するためにEUは「最大限の努力」をすると発言。トランプ氏の脅しが実行された場合、「われわれは断固かつ迅速に対応する以外に選択肢はない」とした上で、「しかし、われわれは不要な応酬の痛みにつながるこうしたシナリオを避けたいと考えている」と述べた。

トランプ氏が署名した鉄鋼とアルミニウムに25%の関税を課す措置は3月12日に発効する。同氏は、米国の貿易の妨げと見なす他国・地域の政策に基づく相互関税の賦課なども打ち出しており、対応を検討中の措置としてEUの付加価値税(VAT)を挙げている。

トランプ氏はまた、特に欧州を念頭に自動車関税の引き上げも示唆。EUからの自動車輸入に対する米関税率が2.5%であることを踏まえ、米国製自動車にEUが現在課している10%の関税率を引き下げるよう求めている。しかし対米関税を引き下げた場合、正式な通商協定で取り決めない限り、EUは世界貿易機関(WTO)の全加盟国・地域に対して関税率を引き下げざるを得なくなる。

EUの行政執行機関、欧州委員会は18日、米国からの自動車輸入に対する関税引き下げについて、まだ具体的な提案は行っていないとし、「関税引き下げは相互に有益である必要があり、ルールに基づく公平な枠組みに沿って交渉されなければならない」と表明した。

ビッグテック

セフショビチ氏は19日、EUは「ビッグテック(大手テクノロジー企業)」に関して米国と協議する用意があるとも発言。EUの規制は中小企業の保護が目的であり、「米国のビッグテックを標的にしたものではない」と述べた。トランプ政権の当局者は、米国のテクノロジー企業が欧州で不当な扱いを受けていると不満を表明してきた。

EUは貿易交渉の糸口として、米国からの液化天然ガス(LNG)や武器の輸入を増やす可能性を示唆している。だが、交渉が決裂した場合は米国の関税に相応する報復関税を速やかに導入する準備も進めている。

ドイツのハーベック経済相は公共放送ARDのインタビューで、トランプ政権1期目に欧州が米国に課した報復関税と同様の措置を再び講じる可能性があると示唆した。当時、トランプ氏は欧州からの鉄鋼・アルミ輸入に関税を賦課。これに対しEUはハーレーダビッドソンのオートバイなど政治的にセンシティブな企業を標的に関税を引き上げる報復措置で対抗した。

ただ、トランプ氏の対ロシア外交がEUに衝撃をもたらしている時期に関税を巡って米国と報復合戦に突入すれば欧州経済だけでなく、EUの政治的安定性も脅かす恐れがある。

原題:EU Ready to Discuss Lower Auto Tariffs With US, Trade Chief Says(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.