イーロン・マスク氏とそのチームが、全米に警戒感を引き起こしている。チームは今や、米政府が料金の支払いに利用し、米国人ほぼ全員の個人的な金融データが保存されている財務省のコンピューターネットワークにアクセスできる。

これによりベッセント財務長官は、同省官僚とマスク氏の微妙な対立の渦中に放り込まれたように見える。

大富豪のマスク氏はトランプ大統領の後ろ盾を武器に、連邦機関の改革を率いている。だが、これが混乱を引き起こし、同氏チームの活動は違法だと批判する向きもいる。

ベッセント氏は伝統的な金融業界の出身だが、広く考えられているよりもマスク氏のチームに協力的だ。

事情に詳しい関係者によると、ベッセント氏は自身のチーム構築に取り組んでいた昨年12月、トム・クラウゼ氏と面談した。クラウゼ氏は今やマスク氏の政府効率化省(DOGE)の一員となり、財務省のシステムやデータを掘り起こしている。

両者の面談では、DOGEが今まさに行っている活動についてなどが話し合われていたと、関係者は述べた。

この面談内容を知る関係者によると、財務省システムに対するマスク氏のアクセスに反対を唱えるため、共和党上院議員6人程度の集団がホワイトハウスに非公式に接触した。DOGEの活動は政府支出を削減するという責務規定を超えていると、上院議員らは示唆したという。

イーロン・マスク氏(昨年12月5日、米連邦議事堂)

しかし、議員らが承認を支持した財務長官は現在進行中の動きを計画することに関与し、クラウゼ氏に特別職公務員の地位を得ることすら勧めた。この地位を利用し、クラウゼ氏は財務省のデータを調べている。

財務省の報道官はコメントを控えた。

マスク氏の組織的な挑発には、ホワイトハウス内の同氏支持者の中にも違和感を感じる者が出てきている。それでもベッセント氏との関係は、マスク氏とトランプ氏の相互依存が今のところは保たれていることを示す。

事情に詳しい関係者によると、歳出削減を目指すマスク氏の取り組みをトランプ氏顧問らは懸念してはいないが、大統領に通知が行く前に行動することも多いそのやり方が、ある種の問題を引き起こしている。

マスク氏の活動を監督するのはワイルズ大統領首席補佐官とホワイトハウスの法律顧問で、他のトランプ政権高位顧問らは触れないようにしている。ワイルズ氏ら政権当局者は、マスク氏がつくり出した問題の後始末に追われたこともあった。

今のところトランプ氏は、ホワイトハウスの主はマスク氏ではなく自分なのだと強調しなければならないことも時にはあるが、マスク氏を巡る騒動を楽しんでいると、大統領に近い関係者は語った。

トランプ氏は今週、マスク氏について「時には同意できないこともあるし、同氏が望む方向にわれわれは進まないこともあるが、素晴らしい仕事をしていると思う」と述べた。

米財務省庁舎の外で、マスク氏に対する抗議のプラカード(4日、ワシントン)

原題:Musk’s Brazen DOGE Tactics Annoy GOP Senators and Treasury Staff(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.