(ブルームバーグ):米資産運用会社バンガード・グループが同社史上最大の手数料引き下げに踏み切ったことで、業界のライバルは苦渋の選択を迫られている。追随すれば多額の収入を失いかねない一方で、現状を維持すれば市場シェアを失うリスクがある。
バンガードは今週、運用資産10兆ドル(約1520兆円)の資産加重平均経費率を0.07%に引き下げた。これは業界平均の0.44%を大きく下回る。この動きは資産運用業界に衝撃を与え、3日の米株式市場でブラックロックの株価は2022年以来の大幅な下げを記録。インベスコやステート・ストリートなども急落した。
懸念を高める要因となったのは、バンガードが競合他社のようなマージンを維持する圧力にさらされていないことだ。バンガードのファンド投資家は同社の取締役を選出しており、同社の事実上のオーナーとなっている。そのため、余剰資金や資産は通常、手数料引き下げに充てられる。
バンガードは今回の措置を受け、投資家が今年約3億5000万ドル節減できると推定。別の言い方をするなら、それだけの収入が失われることになる。
だが、これは同社にとって受け入れ可能なトレードオフだ。これに対し、従来型の所有構造を持つ競合他社は、異なった経済状況の下で事業を運営し、株主を納得させなければならない。これらの企業は競争力を維持しながら、できる限り多くの利益を捻出するより大きな義務を負う。これは難しい問題を突きつける。

CFRAの上場投資信託(ETF)調査責任者アニケット・ウラル氏はリポートで「世界最大級の資産運用会社であるバンガードの動きは、投資家に大幅なコスト削減を還元する一方で、ETFの競合には大きなマージン圧力をかけるだろう」と指摘。

「バンガードの積極的な手数料引き下げ戦略に他の主要ETF発行会社がどう対応するのか興味深い。市場の中核であるインデックス分野でこうした低い手数料を維持する規模を持っているのは、ブラックロックだけである可能性が高い」と分析した。
インベスコはコメントを控えた。ステート・ストリートの担当者は、「精巧に設計された価値の高いSPDR ETFを引き続き投資家に確実に提供する一方で、可能な場合はコスト削減に取り組んでいく」とコメント。ブラックロックの担当者はコメント要請にすぐに応じていない。
原題:Vanguard’s Record Fee Cuts Tighten Screws on BlackRock, Invesco(抜粋)
--取材協力:Matthew Griffin、Athanasios Psarofagis.
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