(ブルームバーグ):5日の日本市場では円が昨年12月以来となる1ドル=153円台前半に上昇。毎月勤労統計が予想を上回った上、赤沢亮正経済再生担当相が足元はインフレ状態との認識を示し、日本銀行の利上げ継続観測が強まった。長期金利は連日で14年ぶりの高水準を更新。株式は小幅続伸して取引を終えた。
赤沢再生相は5日の衆院予算委員会で、日本経済は足元で消費者物価が上昇しているインフレの状態であり、日銀の植田和男総裁の認識と「特に齟齬(そご)はない」と述べた。朝方発表された昨年12月の現金給与総額は1997年以来の高い伸びを示した。
大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは、「赤沢大臣の発言を日銀に対する利上げのゴーサインと捉えた向きもいるだろう」と指摘。賃金統計もしっかりした内容となる中、円は1月高値を上回ったことで上値余地が広がったとの見方を示した。
日銀の正木一博企画局長は5日、日銀が重視する基調的な物価上昇率は目標の2%に向けて高まっているとの認識を示した。その上で、見通しが実現していくなら引き続き政策金利を引き上げ、緩和度合いを調整していく方針だと語った。衆院予算委員会で答弁した。
為替
東京外国為替市場の円相場は上昇。対ドルで1月に付けた年初来高値(153円72銭)を上回り、一時0.8%高となった。
外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は、赤沢再生相と植田総裁の発言のニュアンスがインフレ警戒方向に変わってきているとし、「円金利が上昇する中で円が買われている」と述べた。求人件数の下振れで7日の米雇用統計が弱めになるとの警戒感も、トランプラリーで買っていたドルを手じまう動きにつながっているのではないかと指摘した。
債券
債券相場は下落。順調な賃金の伸びが日銀の利上げ継続を後押しするとの見方が売りにつながった。金融政策変更の影響を受けやすい中期債を中心に利回りが上昇した。
りそなアセットマネジメントの藤原貴志債券運用部長兼チーフファンドマネジャーは、毎月勤労統計が予想より強く、4月の日銀決定会合で物価展望を見直す場合は同会合がライブになる可能性があり、「短期ゾーンの金利に上昇圧力がかかっている」と述べた。
岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは、日銀の利上げ継続や前倒しが警戒される中、投資家が焦って買わないといけない水準ではなく「買い手はなかなか出てきづらい」と指摘する。
新発国債利回り(午後3時時点)
株式
株式相場は小幅高。前日の米国市場のハイテク株高の流れを引き継ぎ、ハイテク主力株を中心に買いが先行した。その後、為替の円高などを背景に下落に転じる場面もあったが、決算を発表したトヨタ自動車やバンダイナムコホールディングスなど個別銘柄の物色が支えとなった。
大和証券の柴田光浩シニアストラテジストは、週末の日米首脳会談を前に様子見姿勢は強く、「マーケット全体というよりは個別物色の動きがある」と話した。トヨタの決算については「関税などの影響が不透明な中で、通期営業利益予想を上方修正したことが好感された」と述べた。
4日に発表した第3四半期の決算が好調だったパナソニックホールディングスや東京精密などが大幅上昇した半面、円高が相場全体の重しになった。インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは、日米首脳会談を前に利益確定の売りも出やすいと言う。
T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは、4日に発動した対中関税などトランプ米大統領の政策に起因する不安定さへの懸念も「市場全体のセンチメントを悪化させている可能性が高い」と指摘した。
その他個別では、ホンダとの経営統合に向けた基本合意書を撤回する方針を固めたと午後に報じられた日産自動車株が急落。ホンダ株は急騰した。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
--取材協力:船曳三郎、アリス・フレンチ、横山桃花.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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