(ブルームバーグ):トヨタ自動車は5日、今期(2025年3月期)営業利益予想を4兆7000億円と従来計画比で4000億円上方修正すると発表した。市場予想は下回ったものの、発表を好感して株価は上昇した。
ブルームバーグが事前に集計したアナリストの予想平均値は4兆8510億円だった。同社の資料によると、人への投資の追加分などがあったものの、円安効果や価格改定やインセンティブ(販売奨励金)抑制などの改善努力が大きく寄与した。
通期の想定為替レートは1ドル=152円(従来見通し147円)、1ユーロ=164円(同161円)に修正。円安は輸出企業の競争力を引き上げ、海外事業の収益を円換算で増加させるため、トヨタなど自動車メーカーにとっては追い風となる。
本体を含め関連企業で認証不正問題が相次いだことを受け、トヨタは今期を「足場固め」の時期としており、過去最高営業利益を達成した前期実績(5兆3529億円)は下回る見通しだ。ただ、トヨタが得意とするハイブリッド車の販売は米国などで好調で、市場では認証不正やリコール(回収・無償修理)からの生産回復に伴い、来期の販売台数増を期待する声も市場では上がる。
トヨタの宮崎洋一副社長はオンライン説明会で、生産の安定化などの取り組みが進んでいるとして「足場固めをしっかり未来に向けてつなげていける、その手応えを感じている今回の上方修正だ」と述べた。
ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストは、上方修正は想定内だとした上で「通期計画は恒例の保守的な前提に基づくもので、上振れ余地を残す」との見方を示した。高級車ブランド「レクサス」を含むトヨタの生産と販売の台数計画は970万台と1010万台でそれぞれ据え置きとなったが、上振れ余地があるという。
午後1時25分に第3四半期決算が発表になると、トヨタ株は前日比マイナス圏に売られる場面もあったが、すぐに切り返し一時5.3%高の3025円と24年12月26日以来の日中上昇率を付けた。同社株は3.1%高で取引を終えた。
中国で大幅減益
市場で期待されていた資本効率の改善に向けた具体的な取り組みに関する情報発信は限定的だった。トヨタの山本正裕経理本部長は説明会で自己資本利益率(ROE)について、現在の10%以上以上の水準を「しっかり維持すると同時に、目安としては20%を考える」と述べた。
足下では業界全体を覆うリスク要因もある。トランプ米大統領は3日、トヨタも工場を構えるカナダとメキシコからの輸入品に対する25%の関税発動を1カ月間延期することに合意したものの、先行きには不透明感が漂う。
シティグループ証券は両国に関税が課されれば、トヨタの利益には7600億円のマイナス影響が出ると試算している。また、同じく米国に自動車を輸出する日本にトランプ氏の矛先が向かう可能性もある。
トランプ関税への対応などについて問われたトヨタの宮崎副社長は、自社の経営判断は販売店や取引先などに大きな影響が出る恐れがあり、事業を取り巻く環境が変化する中で、想定などに基づいて右往左往すれば「産業全体の柔軟性、最終的には俊敏性をそいでしまう」と強調。さまざまなシミュレーションをしながら備えはしていくが、実際にどう対応するかについては「いろんなことが見えてから、そのときに皆さんにお話をし、いち早く動いていく」と語った。
また、中国では比亜迪(BYD)などの現地勢が勢力を増しており、海外勢は苦戦が続いているものの、「レクサス」を含むトヨタの10-12月期の中国販売は前年同期比2.3%増の53万5000台だった。ただ前年同期は1347億円だった中国の連結子会社の営業利益と持ち分法による投資損益の合計は474億円に減少した。
トヨタは同日、中国・上海で「レクサス」の電気自動車(EV)を開発・生産する新会社の設立を決定したことも発表。新会社は27年以降に年間約10万台の能力で生産を開始する。トヨタの上田裕之渉外広報本部長は、EVを含む新エネルギー車を求める消費者が多い中国で「ニーズに合ったような車を開発して商品力を磨いて展開していくというのが今求められているのではないか」と考えたことが今回の決定の背景にあると説明した。
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