(ブルームバーグ):暗号資産(仮想通貨)ビットコインの高騰を受け、家計にもFOMO(乗り遅れ恐怖症)がまん延しつつある。
米国では一般的に、親たちは子どもの進学に備え、税制面で有利な大学費用の貯蓄プランや証券口座、高利回りの貯蓄商品を通じた学資積み立てを検討する。しかし今、従来のこうしたやり方ではなく、子どもの将来を支える十分なビットコインをため込もうとする親も出てきている。
その動機について、株式投資のリターンが不十分だからという人もいれば、合理的な分散投資と考える人もいる。だが、多くはビットコインの真の信奉者で、暗号資産「冬の時代」と呼ばれた最悪期から500%以上も値上がりしたにもかかわらず、ビットコイン価格の上昇はまだ始まったばかりだと確信している。
世界最大の暗号資産ビットコインは昨年12月、初めて10万ドル(現在の為替レートで約1557万円)の大台を突破。2022年11月には1万6000ドル弱で取引されていた。
こうした親たちは、ビットコインの激しい相場変動を十分に消化できるだけの長い時間が子どもたちにはあると主張する。
テキサス州サンアントニオ在住のジム・クライダーさん(35)は、現在1歳と4歳、5歳、7歳の子ども4人のそれぞれが18歳になるまでに1ビットコインを丸ごと貯金してほしいと考えている。
公認ファイナンシャルプランナーのクライダーさんは、子どもの貯蓄を全てビットコインに変えるのはリスクが高いと考える人もいることを知ってはいるが、この資産が10年以内に100万ドルに達すると信じており、見逃せないほどの好機だとみている。
「ビットコインを全く持たないのは、信じられないほどリスキーだ」とクライダーさんは言う。
長い時間軸
一連の仮想通貨スキャンダルで人気が低迷していたビットコインだが、現物投資型のビットコイン上場投資信託(ETF)が昨年導入されると、新たな資金と注目が集まった。米大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利を機にビットコインは急伸し復活ぶりが鮮明になっている。
金融アドバイザーの多くは暗号資産に全財産を託すことを推奨しないが、息子や娘たちのための資産の一部をビットコインに投資することは、標準的な金融の知恵に沿うとも言える。
スタンフォード大学で「金融意思決定イニシアチブ」のディレクターを務めるアナマリア・ルサルディ氏は、より長い時間軸で投資を行うなら、より多くのリスクを取る余裕があり、少額の暗号資産は分散投資戦略の一部となり得ると指摘した。
大学の学費用貯蓄を大幅に殖やすため暗号資産に注目する親もいる。一流私立大学の1年間の学費が10万ドルに迫る今、従来の株式投資では十分なリターンは得られないとの考えからだ。
ルイジアナ州在住の医師トラビス・ヘッドリーさん(43)は、4年ほど前に初めてビットコインに興味を持ち、現在は給料の全額を暗号資産に転換。子どもの大学進学資金も全てビットコインで準備することにした。
税制優遇措置のある大学費用貯蓄プランで10年ほど積み立てた後、その資金を引き出し、課税面での違約金を支払って全てビットコインに投じた。
「自分の貯蓄のためにそうするなら、なぜ子どものための貯蓄用にもそうしないのか、という結論に達した」と明かしたヘッドリーさんは、子どもたちには「もっと長い貯蓄期間がある。全てが吹き飛んだとしても、回復する時間はある」と語った。
原題:‘Bitcoin for Kiddos’: Parents Bet on Crypto for College Savings(抜粋)
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