米エヌビディアの共同創業者ジェンスン・フアン氏をはじめ、世界で最も裕福な富豪500人の資産は27日に合計1080億ドル(約16兆8000億円)減少した。中国の人工知能(AI)開発企業DeepSeek(ディープシーク)の低コストモデルが欧米企業の脅威になるとの懸念からテクノロジー株を中心に主要株価指数が急落したことが響いた。

AIに関連した資産を持つ億万長者が、最大の損失を被った。フアン氏の資産は201億ドル(20%)減少。一方、オラクルの共同創業者であるラリー・エリソン氏の資産は226億ドル減り、金額としてはより大きいが減少率では12%にとどまったことが、ブルームバーグ・ビリオネア指数の集計に示された。デルの創業者マイケル・デル氏は130億ドル、バイナンス・ホールディングスの共同創業者である趙長鵬氏は121億ドルをそれぞれ失った。

テクノロジー業界の大物らの資産は全体で940億ドル吹き飛んだ。ナスダック総合指数は3.1%下落し、S&P500種株価指数は1.5%安。

浙江省杭州に拠点を置くディープシークは2023年からAIモデルの開発に取り組んできたが、同社の無料チャットボットアプリ「DeepSeek R1」が世界的なダウンロード数で首位に躍り出たことで週末に多くの欧米投資家の注目を集めた。ディープシークは多くの新規ユーザーが殺到したため、アプリのサービス障害が発生し、中国本土の電話番号を持つ人のみにユーザー登録を制限せざるを得なくなった。

ディープシークはAIモデルの開発費用がわずか560万ドルだという。同社がダークホース的にAI開発競争に参入したことは、最強モデルの開発には巨額の設備投資が不可欠というシリコンバレーの大手ハイテク企業の主張に異議を唱えるものだ。過去2年間の株式市場最大の原動力となってきた欧米のAIサプライチェーンに依存する富豪らには、ディープシークの参入は深刻な打撃となった。

原題:World’s Richest People Lose $108 Billion After DeepSeek Selloff(抜粋)

--取材協力:Devon Pendleton、Tom Maloney.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.