(ブルームバーグ):韓国のソウル西部地裁は31日、尹錫悦大統領が今月宣布した「非常戒厳」を巡り、内乱の疑いで捜査している合同捜査本部が前日に請求していた逮捕状を発付した。捜査本部が明らかにした。
18日と25日に出頭を求めていた高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)は29日に3度目の出頭要請を行ったが、尹大統領は姿を現していなかった。現職の大統領に対して逮捕状が執行されれば、憲政史上初めてとなる。

捜査当局が大統領の身柄を拘束できるかは不透明だ。過去に試みた大統領府の捜索は阻止された経緯がある。
逮捕状の発付を受け、尹大統領の代理人は今回の決定を「違法であり無効だ」とし、憲法裁判所に効力停止を求める仮処分を申請する考えを示した。大統領警護庁は法律に従って警護措置を講じるとしたが、詳しい説明を控えた。
尹大統領が短時間ながら非常戒厳を宣布したことで、韓国はここ数十年で最悪の憲法上の危機に陥った。金融市場には下押し圧力がかかり、外交努力は妨げられ、最終的には国会での尹大統領の弾劾訴追案可決につながった。
これに伴い職務停止となった尹氏の権限を代行していた韓悳洙首相の弾劾案も国会で可決される事態となり、政治を巡る先行き不透明感は高まる一方だ。
捜査権限
尹氏の代理人は、警察と公捜庁、国防省から成る合同捜査本部に内乱の疑いで大統領を捜査する権限はないと繰り返し主張している。
尹大統領の弁護士は31日、誰が捜査を主導すべきかに関してコメントを控えた。
与党「国民の力」の権性東院内代表は、逮捕状という非常手段で現職大統領を拘束しようとするのは適切な捜査方法ではないと主張。一方、野党側は与党に対し、尹氏を擁護することをやめ、事態の解決に協力するよう求めた。
捜査本部は逮捕状をいつ執行するか決めていないと説明。聯合ニュースによると、逮捕状は来月6日まで有効となっている。
尹大統領は非常戒厳宣布が憲法上の権限の範囲内だと主張し、大統領にとどまるため法廷で争う考えを示している。尹氏の弾劾が妥当かどうか判断する憲法裁判所の審判は進行し、次回の弁論準備手続きは来月3日に予定されている。
原題:South Korea Issues Arrest Warrant for Impeached Leader Yoon (2)(抜粋)
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