長島昭久首相補佐官は12日、トランプ次期米大統領が掲げる中国やカナダ、メキシコへの関税政策に備えなければならないとの認識を示した。日本企業のサプライチェーン(供給網)再編に向け、政府も努力する必要があるという。

長島氏はブルームバーグとのインタビューで、関税は米国に直接輸出する場合だけでなく、日本企業が進出する中国やメキシコの工場などで組み立てた製品にも影響が及ぶと指摘。供給網の再編成に向け「企業としてもちろんそういう努力をするだろうし、国としても努力していく必要がある」と語った。

トランプ氏は11月に、不法な麻薬輸送や不法移民を止めなければ、中国からの輸入品に10%の追加関税を課し、メキシコとカナダからの全ての製品に25%の関税を賦課すると表明した。メキシコで生産する四輪車の8割を米国に輸出しているホンダの青山真二副社長が11月6日の決算説明会で、「さまざまなロビー活動を含めて対応していきたい」と述べるなど、日本企業からも影響を懸念する声が早くも出ている。

長島昭久氏

長島氏はトランプ氏の米大統領選勝利後、11月20日から24日にかけて米国の首都ワシントンを訪問し、石破茂政権と次期米政権のパイプ構築に向けた地ならしを行った。長島氏は米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院で修士課程を修了後、米外交問題評議会研究員などを務めた経験もある。石破政権発足後は国家安全保障担当の補佐官として官邸入りした。

訪米中には第1次トランプ政権の駐日大使を務めたハガティ上院議員など20人と面会し、関税に関しても「結構フランクに議論ができた」と振り返った。トランプ氏は関税を「別の政策を実現するためのてこに使うというようなニュアンス」があると指摘。日本に対しても「他の部分で何か要望があるのか」を把握するため、今後も意思疎通を図る方針という。

日米同盟

第1次トランプ政権で国防副次官補を務めたエルブリッジ・コルビー氏は、日本が防衛費を3%程度に引き上げる必要があると主張するなど、トランプ氏周辺からは防衛費の拡大を求める声が上がっている。当面の課題としては在日米軍駐留経費の日本側負担、いわゆる「思いやり予算」を定めた特別協定は2026年度に更新される予定で、米側が増額を迫る可能性がある。

長島氏は日本が過去数年で防衛費を急増させていることに対して「よくやっているという評価も他方である」と指摘し、さらなる負担増を迫られるかどうかは「今後のトランプ政権とのコミュニケーション次第だ」と述べた。

加えて、駐留経費負担を含めた防衛費の変更は「トランプ氏から言われてやることではない」と主張。日本が周辺情勢を見極め、日本の戦略に基づいて努力することだと語った。

USスチール

USスチール買収計画を巡って日本製鉄は、買収が米国の鉄鋼産業の発展に寄与すると主張してきたが、バイデン大統領は阻止する予定だと複数の関係者が明らかにしている。トランプ次期大統領も反対を繰り返し表明している。

長島氏は「個別の企業の問題は政府が首を突っ込むような話ではない」とした上で、雇用創出など「日本の投資が米国経済にどういう効果を及ぼしているかということは、しっかり説明をしていきたい」と述べた。

長島氏は2003年に衆院議員初当選。旧民主党政権で防衛政務官、首相補佐官や防衛副大臣を務めた。その後、自民党入りし、9月の総裁選では石破首相の推薦人に名を連ねた。日韓議員連盟の幹事長も務める。

他の発言

  • 石破首相が就任前に提案していたアジア版NATO(北大西洋条約機構)構想はワシントン訪問でほとんど話題にならなかった
  • 少数与党であることは外交安全保障の政策的な努力を阻む要因ではない
  • 韓国の政治情勢、「非常に気になっている」
  • 韓国の政権に変化があっても外交面で「かけ離れた政策ができる余地があるとは思えない」
--取材協力:萩原ゆき.

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