この決定に対し、Metaは同日、以下の通り、反論文書を公表した。
まず、2016年にFMを立ち上げた当時、欧州地域では既に個人間で購入・販売・宣伝を行うグループがFacebook上に40万以上も存在していた。FMはこれらの利用者に対してより便利なツールとして立ち上げられたものである。FMは既存の大規模なオンライン・マーケットプレイスの代替手段を提供するもので、実際にドイツの競争規制当局の文書には効果的な競争を生じさせるとして歓迎するとの記述がある。
そして、上記(1)に関し、FMに参加するかどうかは選択制で、多くのユーザーは参加しないとの事実を無視しているとする。また、上記(2)に関し、Metaは競合社のデータを利用することはなく、このことを確実にするためのシステムを既に構築しているとする。
さらに、委員会は反競争的行為による弊害を見つけることができなかったとする。むしろeBayやLeboncoinなどの競合相手が存在し、欧州における市場は拡大していると主張する。
結論として、Metaは決定に対して欧州裁判所へ提訴するとした。あわせて提起された問題を早期かつ建設的に解消する解決策を策定するとしている。
事実関係がそもそも不明なので、本件で予定されている訴訟の結果がどうなるかは予想できない。ただ、(2)についてはMetaがそもそも競合者の情報を利用していたかどうかの事実上の問題が大きい(したがって事実認定の争いになる)のに比べ、(1)については、Facebookのタイムライン上にオンライン・クラシファイド広告を流す行為が抱き合わせと言えるのかの理論的な問題があるように思われる。この点、委員会の公表文(上記(2))によれば、競合者の広告もFacebook上に掲示されているとのことであり、これだけを見れば、Metaの主張にも一理あると思われるところである。
いずれにせよ1300億円が訴額となる大規模な訴訟であり、その動向を注視したい。
(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 保険研究部 専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター 松澤登)