ニューヨーク市では、カスタマイズしたラテの値段が7ドル(約1050円)を超え、出来上がりまで5分以上待たされることも珍しくない。そんな中、新興コーヒーチェーンのマット・エスプレッソが、3ドルのコーヒーと迅速なサービスで大学生や会社員を引き付けている。

マンハッタンとその周辺に約30店舗を展開。今後5年で全米に300店舗を展開するという野心的な計画の下、最初の資金調達ラウンドの準備を進めている。

ブルックリン・カレッジに新店舗をオープンし、ニュージャージー州のラトガース大学にも出店するなど、地元以外でも店舗を展開している。同社の売り上げの53%を占める「3ドルメニュー」は、アプリを通じてのみ注文でき、抹茶やペストリーを含めメニューの半分以上を占めている。

チェーンの名前はイタリア語で「クレイジー」を意味するが、「クレイジーなくらい気前がいい」の意味だと、マットを立ち上げたジェニファー・ママン氏は言う。同氏はモルガン・スタンレーで株式マーケティングの仕事をしていたが経営者に転身。夫のモシェ・ママン氏とその親友のシュロミ・レビ氏とともに創業した。

マットは効率的な経営によってお手頃価格を維持している。 旗艦店であるニューヨーク大学店は、100平方フィート(約9.3平方メートル)のスペースに収まっている。

コスト競争に勝つためのママン氏の戦略は「小規模で効率的」であることだ。 店舗面積は平均200-400平方フィートで、座席のない店舗も多い。フランチャイズ加盟希望者には、新店舗に1000平方フィート以下のスペースを見つけるよう指示している。

マットは2016年に、ニューヨーク大学やロックフェラーセンターの近くなど、人口密集地を中心に店舗をオープンした。各店舗の従業員数は平均2人で、ペストリーをセントラルキッチン(集中調理施設)から市内全域に配送する体制を整え、コーヒーを安く手早く飲みたい顧客に基本的なサービスを提供している。

マットが使用しているコーヒー豆の配合はロブスタ種が80%を占めている。スターバックスなどの大手チェーン店が使用しているアラビカ種よりも安価なコーヒー豆だ。 主産地の日照りなどで両方とも今年に入って価格が高騰しているが、依然としてロブスタ種の方が安い。

食品やその他の必需品で消費者の懐はすでに圧迫されている。朝の1杯をどこで飲むかを決める際に、味と同じくらい価格が重視されるようになるかもしれない。

評判はまちまち

ブルームバーグがマンハッタンのマットで話を聞いたオフィスワーカーたちは、このコーヒーを気に入っていた。1杯を求めてクイーンズから車でやって来た客もいる。

しかし、賞賛ばかりではない。

フランクリン・リバス氏は、勤務先でコーヒーが切れているためマットに立ち寄っただけだった。「味が最高だとは言えない。あくまで代替品だ」と述べた。

マットのターゲットである大学生も、コーヒーについては同様に冷めた反応だった。

ニューヨーク大学2年生のスニディ・スリニバスさんはコーヒー以外の3ドルメニューしか注文しない。コーヒーは「当たり外れがある」と話す。

「たまになら耐えられないこともない」程度だという。友人の4年生、カーラ・ペドルさんは、1年生の時に「もっと高い店に行くほどのお金がなかった」ので、この店にはまったと話した。「まあそれなり」だと付け加えた。

マットは、スターバックスやダンキンドーナツなどの大手コーヒーチェーンや星の数ほどある小規模チェーン、およびマクドナルドやウェンディーズなどのファストフード店などの競合他社を相手に、シェアを広げようとしている。

同社の店舗の大部分(27店舗)はフランチャイズによるものだ。現在のフランチャイズ加盟者はマットのファンで構成されており、以前の資金調達は家族や友人を対象とした。ママン氏は、今後の店舗運営にはより経験豊富なレストラン経営者の起用を考えているという。

「スタバの下の市場」

ライバルの多い市場で、手頃な価格の持ち帰りコーヒーを基盤にフランチャイズを拡大することは困難を伴うだろう。 コーヒーの評判がまちまちなことも、前途を多難にする。

カリノフスキ・エクイティー・リサーチのマーク・カリノフスキ最高経営責任者(CEO)は「ニューヨーク市では、人口密度が高いというだけの理由で、他の場所では困難なことが可能になる」と指摘し、全国展開は「難しいだろう。その理由の一つは、単純にブランド認知度の不足だ」と述べた。

マットが最初にブルックリンに出した店舗は、付近に人通りが少なかったため閉店することになった。ママン氏によると、新しいブルックリン・カレッジの店舗は繁盛している。マットは現在、大学や空港のような人の集まるエリアを念頭に、拡大計画を練っている。

カリノフスキ氏は「スタバよりは下のプレミアムとは言えない体験を提供する市場が存在する余地はある」が、通常その役割はマクドナルドやダンキンが担っており、これらのチェーン店の商品も「激安体験を提供することを意図したものではない」と述べた。

原題:Morgan Stanley Alum Wins Over Office Workers With $3 Latte Shop(抜粋)

--取材協力:Dayanne Sousa.

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