(ブルームバーグ):国内大手生保4社の運用資産の大半を占める国内債券の評価損が、金利上昇を受け増加傾向にある。9月末の4社合計額は4兆4294億円と3月末の2兆508億円の2倍超に拡大した。
各社が25日までに発表した2024年4-9月期決算で明らかになった。国内債券評価損の拡大は、日本銀行による利上げに伴う債券利回りの上昇(価格は低下)が主因。評価損が大きく膨らんだ6月末の5兆6907億円に比べると減少した。
債券の評価損の拡大は減損リスクを高めるほか、一部の債券の評価損は保険金の支払い能力を示すソルベンシーマージン比率の低下要因となり、資産配分でリスクを取りにくい原因にもなる。このため、生保各社は金利上昇によるマイナスの側面として注視している。長期の保険契約に対応するため、債券での運用は原則として長期保有が前提だ。
日本生命の都築彰・執行役員財務企画部長は、債券価格の下落(利回り上昇)について、減損処理が必要な水準は「近くはない」と指摘。ただ、「どのような金利水準になったら、どれくらいの含み損が出てくるのか。今までに経験のないステージなので、全社を挙げて検討を進めている」と金利急騰に警戒を強めている。
住友生命保険の増田光男運用企画部長は足元の金利状況では、減損について「さほど懸念する状況ではない」と指摘。「ポートフォリオ全体の利回りの水準は上がってきている」という。明治安田生命保険の北村乾一郎運用企画部長も現時点では「減損が発生する状況ではないと認識している」と説明した。
10年国債利回りは日本銀行が3月に利上げに踏み切る前の0.7%台から直近では1%台に上昇している。生保は運用ポートフォリオの改善に向け、利回りの低い債券から高い債券への入れ替えを進めている。
現状ではソルベンシーマージン比率の観点からも大きな問題はなさそうだ。例えば日本生命(単体)の場合、9月末の同比率は970.8%と3月末に比べ9.2ポイント低下したが、健全とされる200%を大きく上回っている。
円換算の外国証券運用の利息・配当金収入や海外事業の収益に影響する為替相場の見通しについては、米大統領選などを受け、住友生命が25年3月末で1ドル=148円(従来140円)、明治安田が同145円(従来135円)、第一生命が同153円(従来140円)とそれぞれ米ドルに対して円安方向に見直した。
(第一生命の為替見通しなどを追加して更新します)
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