22日の米株式相場でS&P500種株価指数は続伸。優良株や小型株が堅調に推移した。一方、今年の勝ち組である大型ハイテク銘柄は伸び悩んだ。

ハイテク銘柄中心のナスダック100指数は0.2%高。景気敏感株は比較的堅調で、小型株で構成するラッセル2000指数は1.8%上げた。

S&P500種の均等加重バージョンであるイコールウエート指数は0.8%高。終値ベースで最高値を更新した。この指数ではウォルグリーン・ブーツ・アライアンスもエヌビディアも同じウエートで算出される。銀行株の指数は約2年ぶりの水準に上昇。一方、エヌビディアやアルファベット、フェイスブック親会社のメタ・プラットフォームズなどの大型テクノロジー株は軟調だった。

ファンドストラットのトーマス・リー氏は、小型株やシクリカル銘柄にはさらなる上昇の余地があるとみている。トランプ次期政権が計画する規制緩和や全般的な「アニマルスピリット」が理由で、市場全体の上昇もまだ続く可能性があると指摘。

「センチメントが『強気の極み」に達するときは、株式が『完璧』を見越した価格設定になるときだ」とし、「いくつかの尺度で見ると、その地点にはまだ至っていない」と述べた。

バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストはナスダック100指数について、S&P500種と対比して米国株選好トレードの巻き戻しを誘発し得る水準に近づきつつあると指摘した。

米国の企業活動は11月に拡大。トランプ次期政権の政策期待で需要見通しが改善し、2022年4月以来の高水準となった。S&Pグローバルが購買担当者指数(PMI)速報値を公表した。

市場分析会社バイタル・ナレッジの創業者、アダム・クリサフルリ氏は「11月の米総合PMI速報値は全体として強気だった。サービスの強さが寄与した」と指摘。「成長の動向は好ましく、物価圧力は鈍化しつつある」とし、ゴルディロックスシナリオを示唆すると分析した。

国債

米国債は高安まちまち。短期債利回りは上昇し、利回りカーブはフラット化した。来週は25日から3日間の日程で2年債、5年債、7年債の入札がそれぞれ実施される。

外為

外国為替市場で円の対ドル相場は上下に振れる荒い展開。朝方に1ドル=154円台前半まで買われた後、155円台に下落する場面もあった。

 

ブルームバーグ・ドル・スポット指数は週間ベースで8週連続高。ここ1年余りで最長の上昇局面となった。米大統領選でのトランプ氏勝利と持続的な経済成長を追い風に、22年11月以来の高値に達した。

ストーンヘイジ・フレミングのマルチアセット・ポートフォリオ・ソリューションズ責任者、ピーター・マクリーン氏は「ドルの上昇は続く可能性がある」と指摘。「地政学情勢も緊迫化している。投資家がドルに逃避するのは自然な流れだ」と述べた。

インベスコのシニアポートフォリオマネジャー、アレッシオ・デロンジス氏は、トランプトレードは12月末までに途絶え、焦点はマクロ要因に戻ると指摘。ただし、こうした要因もドルの支えになるとの見方を示した。

「当社はドルに関して最大限の強気から、やや強気に移行した」とし、「ドル・オーバーウエートのポジションでゆっくりながらも着実に利益を確定し、より中立的なスタンスに移りつつある」と話した。

ドイツ銀行の為替調査グローバル責任者、ジョージ・サラベロス氏はドルについて、トランプ氏の政策が全て織り込まれているわけではないとし、まだ上昇の余地はあると指摘。トランプ氏が最も極端な政策を実行し最大限の影響を及ぼすシナリオは、金融市場に30%しか織り込まれていないという。

ユーロは対ドルで下落し、2年ぶり安値となった。欧州中央銀行(ECB)による来月の大幅利下げ観測が高まった。

ユーロ圏の民間部門の経済活動は11月に予想外に縮小した。政治的な混乱と貿易を巡る対立激化への懸念による影響が顕在化した。

みずほセキュリティーズの欧州・中東・アフリカ地域(EMEA)マクロ戦略責任者ジョーダン・ロチェスター氏は、「こうしたPMIの数字は、米国と欧州の成長見通しが乖離(かいり)していることを確認するものだ。われわれはこれについて、選挙前から高い確信を持っていた」と述べた。

原油

ニューヨーク原油相場は続伸。ロシアからイランに至るまで地政学的リスクが急激に高まった。米株式市場の堅調もリスク資産の投資妙味を高めた。

ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は今週6%余り上昇。ロシアとウクライナの戦争は中・長距離ミサイルの撃ち合いになり、数カ月前から深刻さを増している。イランは国際原子力機関(IAEA)から非難されたことへの対応として、高濃縮ウランの生産を拡大する方向に転じた。

株式市場の堅調も原油相場の追い風となった一方、ドル高が商品投資の妙味を押し下げ、原油の上値は重くなった。

WTI先物週間騰落

今週はそれでも強気サインが浮上した。WTI先物の期近2限月のスプレッドは46セントに拡大し、供給ひっ迫を示唆。先週は2月以来のコンタンゴ(順ざや)に転じ、弱気シグナルを発していた。

週間ベースの原油相場は10月中旬以降、上げ下げを繰り返してきた。強いドルと潤沢な供給、需要の軟化示唆が向かい風になった。今週はロシアが核ドクトリンを改定するなど、地政学的な緊張が高まり、原油価格は一時的に押し上げられたが、来年の需給が供給超過になるとの見方が広がる中で上昇は続かなかった。

ラピダン・エナジー・グループのボブ・マクナリー社長は「地政学的情勢が供給障害につながるリスクはまだ市場で顕在化していない」とブルームバーグテレビジョンのインタビューで話した。「トランプ次期大統領はディールを成立させるための材料を得ようと、ロシア産エネルギーの輸出制限に積極的になるだろう」と述べた。

米国は21日、ロシアの主要金融機関であるガスプロムバンクに制裁を科した。バイデン政権はそれまで、世界のエネルギー市場が動揺する可能性を懸念してガスプロムバンクへの制裁を見送っていた。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物1月限は、前日比1.14ドル(1.6%)高い1バレル=71.24ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限は1.3%上昇の75.17ドル。

ニューヨーク金相場は5営業日続伸。週間ベースでは昨年3月以来の大幅高。ロシアとウクライナの戦争激化で逃避需要が拡大した。米金融政策の追加緩和見通しも注目されている。

金スポット価格は一時1.5%余り上昇。前日にロシアが「新たな」弾道ミサイルでドニプロを攻撃したことから、西側諸国に警戒が広がった。地政学的な緊張激化は逃避先としての金の需要を高める。

金スポット価格

サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は「ロシアとウクライナが互いに緊張を高めあうことで、その地政学的リスクはイスラエルと親イラン派民兵組織との間で1年に及ぶ紛争より高くなっている。市場はそれに応じて動いている」と述べた。

逃避需要があらためて強まったことで「11月上旬に調整局面に入っていた金には、新たなモメンタムが戻った」と続けた。

シカゴ連銀のグールズビー総裁は21日、金利は「かなり下がる」との見方を示し、インフレ率が米金融当局の目標に向かって鈍化が進んでいることに自信を示した。金利の低下は利息を生まない金投資の追い風となる。

金相場は年初からこれまでに30%余り上昇。中央銀行による買い入れと、逃避需要、米金融政策の緩和転換に支えられてきた。トランプ氏の大統領選当選から数週間はドルの上昇が商品相場を圧迫し、金の上昇もペースを落としていた。

来年には金が過去最高値を更新するとの見方が広がっている。ゴールドマン・サックスとUBSはいずれも、金への強気見通しを最近明らかにした。

金スポット価格はニューヨーク時間午後2時分現在、前日比40.89(1.5%)上昇の1オンス=2710.61ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物2月限は37.90ドル(1.4%)高い2737.20ドルで引けた。

原題:Bets on ‘Trump Put’ Send Stocks, Bitcoin Higher: Markets Wrap(抜粋)

Treasuries Mixed as Front-End Underperforms, Flattening Curves(抜粋)

Dollar on Longest Winning Run in a Year on Trump Presidency (2)(抜粋)

Dollar on Best Run in a Year; Euro at Two-Year Low: Inside G-10(抜粋)

Oil Advances on Rising Geopolitical Tensions From Iran, Russia(抜粋)

Gold Set for Biggest Weekly Jump in 20 Months on Haven Demand(抜粋)

--取材協力:Margaryta Kirakosian.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2024 Bloomberg L.P.