(ブルームバーグ):人工知能(AI)革命は、飽くなき資金需要を生み出し、米国のハイブリッド債(劣後債)においては、発行体の勢力図が塗り替わりつつある。
AIデータセンター向け電力需要の急拡大への対応を急ぐ公益事業各社による資金調達ニーズは鮮明で、ハイブリッド債の発行体としては、国内の銀行セクターを抜いてトップに躍り出た。
ブルームバーグが集計したデータによると、2024年は、ドミニオン・エナジーやセンターポイント・エナジーなどが、発行を通じて総額180億ドル(約2兆7900億円)近くを調達。昨年実績の9倍に膨らんだ。
公益事業各社は、資金の調達手段としてハイブリッド債を選択し始めているが、格付け会社ムーディーズ・レーティングスによる資本性判断の基準変更が一因にある。
新たな基準によって、ハイブリッド債は発行額の半分を資本、残りは負債として評価し得ることから、普通社債と比べて企業はバランスシート上の負債を抑えることができる。
米ファンド運営会社スペクトラム・アセット・マネジメントの最高経営責任者(CEO)で、50年近くハイブリッド債に携わってきたベテランでもあるマーク・リーブ氏は、「自動車あるいはデータセンターについて語るにしても、エネルギー需要はさらに増えるだろう」と指摘した。

ベインによると、電力の消費量は横ばいないしは減少の時期を経て、今後数年間は需要が供給を上回る見通しにある。増加分の大半はデータセンターに関連しており、こうした電力需要に対応するためには、2028年までに年間発電量を最大で26%増やす必要があるという。
業界団体のエジソン・エレクトリック・インスティチュートによれば、来年には資本支出が2000億ドルを超える見通しで、これは10年前のほぼ2倍の額に相当する。
ムーディーズによる2月の基準改定を受けて、多額の資金調達ニーズを抱える公益事業会社にとっては、格下げリスクを負うことなくデットファイナンスを行う上でハイブリッド債の発行がより費用対効果の高い選択肢となった。
今回の改定によって、企業はハイブリッド債を通じて調達した資金の50%を資本として認定されることが可能。従来は25%だった。ムーディーズの基準に適合するのは通常、発行から5年あるいは10年後に繰り上げ償還できる最終償還年限30年のハイブリッド債となる。
クレジットサイツの公益事業部門責任者、アンディー・デブリーズ氏は「データセンター関連の資本支出が増加している矢先に、ムーディーズが天から贈り物を降らせたようなものだ」と述べた。

原題:AI Boom Turns Power Firms Into Biggest US Hybrid Capital Engine(抜粋)
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