不動産仲介業者のレッドフィンは、 ドナルド・トランプ氏の大統領選勝利前に来年の住宅ローン金利の平均を6.1%と予想していた。しかし、選挙から3日後、6.8%に上方修正した。現在の高水準とほぼ変わらない数字だ。

「トランプ氏が理由だ」と、レッドフィンのチーフエコノミスト、ダリル・フェアウェザー氏は述べた。「市場は、トランプ氏が少なくとも一部の関税を導入することを織り込んでいるようだ。しかしトランプ氏が何をするのかを予想するのは本当に難しい」と語った。

住宅ローン金利は、少なくとも一つの指標によると7%を超えた。エコノミストは金利の高水準が長期化すると予想しており、手頃な選択肢を模索する住宅購入予備軍にとって厳しい状況になる公算が大きい。

「金利は徐々に低下するとの見方があったが、もはやそうはならないようだ」と、キャピタル・エコノミクスの北米担当エコノミスト、トマス・ライアン氏は述べ、「その結果、住宅市場が凍り付いた状態が、当社や他のエコノミストが予想していたよりも長く続くことになるだろう」と予想した。

トランプ氏の勝利の翌日に株式相場は上昇したが、債券市場は警戒感を示した。関税やその他の政策がインフレを高める恐れがあるためだ。バークレイズのエコノミストは選挙後に、関税や移民制限の可能性を理由に、今後2年間のインフレ予想を引き上げ、経済成長見通しを下方修正した。

すべての輸入品に最大20%、中国製品にはさらに高い60%の関税を課すというトランプ氏の案は、主要な不確実性要因だ。エコノミストによれば、企業がコスト増を消費者に転嫁する可能性が高く、関税はインフレにつながり得る。

トランプ氏が減税も実施した場合、歳入が減少して財政赤字が拡大し、長期金利がさらに上昇する可能性がある。

不法移民数百万人を国外追放するというトランプ氏の計画が米国の住宅不足をさらに悪化させる得るとの指摘もある。同政策により建設業界の労働力が減少すれば、新築住宅の建設は進まず、コストはさらに高くなるだろう。

全米不動産協会のシニアエコノミスト、ナディア・エバジェルー氏は「労働力が必要だ」とし、「住宅建設業者が手頃な、つまり人々が購入可能な価格で住宅を提供できないことがあるが、その理由は労働力不足だ」と話した。

カリフォルニア州ピノールの住宅街

金利上昇は購入者にとってさらなる「逆風」となり、住宅販売の回復は予想よりもさらに緩やかなものになるだろうとキャピタル・エコノミクスは予想する。ライアン氏によると、住宅ローン金利は2024年中は7%前後で高止まりし、25年末までに0.25ポイントしか低下しない公算が大きい。

「トランプ氏の政策は全体としてインフレを高めるというのが共通認識だ」とライアン氏は述べ、「それが現在、債券市場の変化を促している」と続けた。住宅ローン金利は10年物米国債利回りに連動し市場のインフレ期待に左右される。

ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏も、30年物固定金利型住宅ローン金利が当面、7%前後で推移すると予測している。

「住宅ローン金利が下がるのは来年の秋以降になるだろう。それも確実とは言えない。トランプ氏の政策がどのようなものになるか、また、それをどれだけ積極的に推進するかに大きく左右されるからだ」と同氏は語った。

シアトルのオープンハウスで家の中を案内する不動産エージェント

原題:‘Difference Is Trump’: American Homebuyers Brace for Rate Pain(抜粋)

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