大企業の幹部800人を対象とした調査で、生成人工知能(AI)の利用が過去1年間でさまざまな職種に急速に普及し、情報技術(IT)から人事などの分野に広がっていることが分かった。

ペンシルベニア大学ウォートン校とマーケティングコンサルタント会社GBKコレクティブの報告書によると、生成AIを少なくとも週1回利用していると答えた回答者の割合は約72%と、初回の調査だった2023年の37%から増加した。

生成AIの利用は、昨年には導入が遅れていた人事やマーケティング、オペレーションなどの分野にも広がっているほか、今年から調査対象となった法務や財務・会計では、少なくとも週1回利用と答えた割合がITと同程度となった。

今回の調査では、企業が生成AIを巡る当初の大げさな報道や驚嘆を乗り越え、より実用的な利用へと移行していることが明らかになった。

最も多く言及された用途は、文書や提案書の作成・編集で、回答者の64%を占めた。続いてデータの分析・解析で62%だった。回答者の半数余りが挙げた他の用途は、カスタマーサービス・サポート、不正行為の検出・防止、財務予測と計画などだった。

生成AIの普及によってどれだけの職が失われるのか、どれだけの職が新たに生み出されるのかなど、生成AIに関する多くの問題に対する答えはまだ出ていない。

調査によると、購買・調達部門に従事する回答者のほぼ全員が生成AIは従業員のスキルを「強化する」とした一方、財務部門ではスキルが生成AIに置き換わるとの回答が約9割に上った。

今回の調査では、生成AIを巡る認識が全体的に昨年に比べて若干変化していることが示された。生成AIがスキルを強化すると答えた回答者の割合が若干増えた一方、一部の業務においてスキルが置き換わると答えた割合はわずかに減少した。

報告書の共同執筆者を務めたウォートン校のステファノ・プントーニ教授は報告書に関する投稿で、今回の調査ではAIは破滅の前兆か、または理想郷への入り口かという二つの極端な考え方の間にある溝が狭まりつつあることが示されたと指摘。企業は自社にとって最善のAIの利用方法を見つけるために検証を続けるとし、「これはまだ始まりに過ぎない」と締めくくった。

原題:AI Usage Quickly Broadens From IT to HR and Marketing in Survey(抜粋)

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