(ブルームバーグ):米大統領選でのトランプ氏勝利を受けたドル高が頭打ちになる可能性が幾つかの主要なマーケット指標で示唆され始めている。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は19日までに3営業日続落となった。先週には2年ぶりの高値を付けたが、短期的には上値が限定的であることがモメンタム指標で示されている。
トレーダーによると、投資資金のフローはこれまでよりは一方的でなくなり、ドルの方向性に関する見方はより慎重になり始めているという。
野村インターナショナルのG10通貨スポット取引責任者、アントニー・フォスター氏は「米大統領選後のドル高トレンドは確かに荒波に突入しつつある」と述べた。
世界の基軸通貨であるドルは9月終盤から上昇している。トランプ次期大統領による関税引き上げ方針のほか、同氏の政策がインフレ率を押し上げ、米金融当局による利下げに歯止めがかかるとの見方が背景。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は年初来で5.3%上昇している。

テクニカル面では、モメンタム指標であるドルのスローストキャスティクスが買われ過ぎを示す領域に達している。JPモルガン・チェースのシンガポール拠点で営業・マーケティング責任者を務めるニラジ・アサブレ氏によると、同行の新興国市場におけるFXリスク・アペタイト指数が15日終値でドル売りシグナルを出したという。
他の主要通貨のファンダメンタルズに関する投資家の見方も一因になっている。ユーロは3カ月間にわたる下落局面後にサポートラインの1.05ドルで切り返した。ユーロのさらなるサポートラインは2023年の安値1.0448ドルだ。
野村のフォスター氏は「ユーロに対するセンチメントは今、非常にまちまちで、一部ではパリティ(等価)到達やパリティ割れが指摘されている一方、押し目買いの好機と見る向きもある」と指摘。「ユーロのショートポジションの利益を確定する口座がかなりあるが、全てではない」と語った。
日本銀行の植田和男総裁が18日、12月会合での利上げを明確に示唆しなかったにもかかわらず、ドル・円は上値を試せずにいる。フォスター氏は、ほとんどのケースで「円のフローは双方向だった」と述べた。
ブルームバーグ「マーケッツ・ライブ」のストラテジスト、ガーフィールド・レイノルズ氏は「選挙後のドル高は相対的な利回り動向から判断すると行き過ぎであり、短期的には直近の高値を取り戻すのは難しいだろう」とコメントしている。
米選挙後にドルがユーロやオフショア人民元、円などの通貨に対して上昇するとの見方を当初強めていたレバレッジファンドでさえ、ドル高継続への賭けを減らしているようだ。
JPモルガンのアサブレ氏は「過去1週間では世界的にドルに対する全体的なネットの売りが見られた」とし、「資産運用会社はユーロやポンドに対して若干のドル買いを行ったが、マクロヘッジファンドによる対ユーロでのドル売りで相殺された」と話した。
もちろんウォール街でドル高を見込む声は依然として多い。ヘッジファンドや資産運用会社、その他の投機筋は一段高を見越したポジションを構築しており、米商品先物取引委員会(CFTC)が発表した12日までの1週間の最新データによると、ドル強気ポジションは約177億ドル(約2兆7500億円)となっている。

ゴールドマン・サックスのストラテジストは今月、ドルが「より長期にわたり」堅調さを維持すると予想する理由を挙げ、長らく保持してきたドル安見通しを放棄。モルガン・スタンレーは25年にはドルがよりレンジ内での値動きで推移するものの、年内は上昇を続けると予想した。
マネックスの外国為替トレーダー、ヘレン・ギブン氏は「新政権の国内政策は経済をかなり活発に保つ可能性が高く、通商政策もドルに幾分の上昇圧力をかけ続けるだろう」と指摘。「これらの政策が実施されなかったり、効果がなかったりすれば、多少の下落余地はあるが、ドルを巡るリスクはなお上方に傾いている」との見方を示した。
原題:Dollar Rally Hits ‘Choppy Waters’ as Two-Way Trading Returns(抜粋)
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