追加利上げのタイミングを計る日本銀行と利下げを続ける欧州中央銀行(ECB)の日欧金融政策の方向性の違いから、ユーロが対円で下落するとの見方がストラテジストらの間で広がっている。

ラボバンクや野村証券、みずほ証券は2025年末までにユーロ・円相場が1ユーロ=140-150まで下落すると予想した。同水準は23年6月以来、およそ1年半ぶりの安値圏となる。20日時点は164円前後で推移している。

ECBは今年に入り6月、9月、10月と既に政策金利を3回引き下げた。金融政策の見通しを反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場は、12月にさらに0.25%の追加利下げが行われる可能性を100%織り込んでいる 一方、日銀が12月に利上げを行う可能性の織り込みは約50%で、来年1月までは約80%となっている。

ユーロ・円に対するストラテジストの予想はドル・円と比べ明確だ。ドル・円の見方が定まらない背景には米経済統計の堅調が続き、連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースが読みづらく、次期米大統領に減税や関税などインフレ政策を掲げる共和党のトランプ氏が返り咲くことになり、政治と為替の関係が不透明になっていることがある。

野村証の為替ストラテジスト、茂木仁氏は日銀について「恐らく来年前半にかけて追加利上げを複数回行うと考えられている」と指摘し、欧州との金利差を理由にユーロ・円は円高方向に向かうとみている。みずほ証は25年末に1ユーロ=140円と予想。これは23年3月以来のユーロ安・円高水準だ。

ラボバンクの外国為替戦略責任者、ジェーン・フォーリー氏(ロンドン在勤)はリポートで「ハト派的なECBにより、来年ユーロは回復力を失うと予想しており、今後12カ月でユーロは対円で150円まで下落する余地がある」と分析。「ユーロ圏は構造的な問題と投資不足にも苦しんでいる」とも指摘した。

ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、オリビエ・コルベール氏とキット・ジャックス氏はリポートで、デリバティブ(金融派生商品)市場ではユーロ・円のリスクリバーサルがインプライドボラティリティー(予想変動率)よりも速いペースで増加しており、スキュー(ゆがみ)が高くなり過ぎているとの認識を示した。

ソシエテでは、低い行使価格での売りや弱気のノックアウト価格設定など弱気のユーロ・円戦略で資金調達を行うことを推奨している。

--取材協力:Masaki Kondo、Michael G Wilson.

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