(ブルームバーグ):米宇宙開発企業スペースXは19日、大型宇宙船「スターシップ」の6回目の主要打ち上げ試験をテキサス州南部で実施した。トランプ次期大統領が見守る中、新たな成果を達成したが、期待の高かったロケットブースターの空中「キャッチ」は断念された。
上段のスターシップと下段のブースターで構成する打ち上げシステムは現地時間午後4時(日本時間20日午前7時)過ぎに発射台から離陸。だが飛行開始から数分後、スペースXは、「チョップスティックス(箸)」と呼ばれる巨大アームでブースター「スーパーヘビー」をキャッチする計画を中止。ブースターは制御された状態で海に着水した。前回の飛行ではキャッチが成功していた。
スペースX、打ち上げロケット回収に成功-火星有人飛行に一歩前進か
スペースXのエンジニア、ケイト・タイス氏は生中継で「初めの試みはかなり素晴らしい出来だったが、チームや市民、発射台の安全が最優先だ。このため妥協せざるを得ない」と説明した。
スーパーヘビーはメキシコ湾に着水したが、スターシップは宇宙空間まで飛行を続け、ある時点でエンジン「ラプター」1基の再点火に成功した。これは同社のこうした飛行試験で初めて。スターシップは地球への降下制御と宇宙空間の航行でエンジン再点火が必要になる。
スターシップは約45分間かけて地球をほぼ1周した後、大気圏に突入。改良された耐熱シールドが突入時の高温に耐える中、機体はプラズマの赤みのあるオレンジ色の光に包まれた。
機体は燃焼や軽微な損傷の跡も一部見られたが大気圏突入に耐えたように見受けられ、フラップを動かし降下を誘導。その後、雲の中を通りながら降下する中で機体の向きを反転させ、エンジンを再始動して機体を直立した状態にして、ニューヨーク時間午後6時過ぎにインド洋になめらかに着水した。

これまでに開発されたロケットとして最大かつ最も強力なスターシップは、半世紀ぶりに人類を月に送るため米航空宇宙局(NASA)が使用する月着陸船として契約が締結されている。この宇宙船は、火星を植民地化するというマスク氏の野望の要でもある。
スターシップはスペースXの事業計画に大変革をもたらすはずだ。完全再利用が可能になるように設計され、どのロケットよりもはるかに低コストでの飛行が可能と同社は説明する。業界を主導する同社の「ファルコン9」と「ファルコンヘビー」といずれ交代する見通し。
だが完全再利用型ロケットの提供という約束を果たすには、スペースXが打ち上げ後の全ての部品回収技術を改良することが求められる。
原題:SpaceX Launches Starship Rocket as Trump and Musk Look On (4)、SpaceX Launches Starship Rocket as Trump and Musk Look On (3)(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2024 Bloomberg L.P.