男女雇用機会均等法施行後、働く女性が増加し、総務省によると、正社員・正規職員として働く50代女性は2022年に全国で255万人となった。過去35年で100万人以上の増加である。この世代の女性は、結婚・出産を機に退職するケースが主流だったため、同世代の男性の正社員・正規職員に比べれば、全国的にみても約4割の人数にとどまるが、組織ごとにみると、その後は経営合理化や少子化によって若年層の採用が抑えられてきたため、50代女性の構成割合がじわりと上昇している、というケースもあるのではないだろうか。

一方で、50代女性社員が組織の中で果たしている役割は、どのように位置づけられるだろうか。また上司は、50代女性社員にどのような役割を期待し、本人に伝えているだろうか。勿論、人事評価や役職は個人によって大きく異なるものだが、総じて、男性よりも管理職比率が低いため、役割が明確ではないケースや、本人に伝えていないケースもあるのではないだろうか。後述するように、女性社員が上司から期待されていると感じられれば、仕事への意欲が高まるという先行研究もあり、増えつつある「50代女性社員」に力を発揮してもらう上で、「上司からの期待」は外せないテーマである。

そこで本稿では、一般社団法人定年後研究所とニッセイ基礎研究所が昨年10月に共同研究として行ったインターネット調査「中高年女性の管理職志向とキャリア意識等に関する調査~『一般職』に焦点をあてて~」(以下、「共同研究」)の結果などから、50代女性社員が、上司から期待されていると感じていることや、その違いによってキャリア意識にどのような違いがみられるか、といった点について報告する。

50代女性社員のうち上司に「期待されていない」と感じている人が2割弱

まず筆者らの共同研究から、「上司から期待されていると感じていること(複数回答)」に関する50代女性の回答を抽出し、5歳階級ごとにまとめた結果によると、「50~54歳」と「55~59歳」のいずれにおいても、最多は「従来通りの業務の継続」(約3割)という“現状維持”への期待だった。これと肩を並べたのが、「仕事のスキルを上げること」や「仕事のパフォーマンスを上げること」といった“成長”への期待(各年齢階級で約3割)だった。3番目に多かったのは、「後輩や非正規社員への教育、指導」や「他の社員のサポート」といった“教育・指導”への期待だった(2割前後)となった。

一方、「期待されていない」と感じる割合はそれぞれ2割弱、「分からない」という回答も1割強から2割弱あった。「雑用」はいずれの年齢階級でも、5%前後だった。一方、「管理職への就任」という高い期待を感じていたのは5%前後にとどまった。

このような結果を見ると、50代女性社員のうち、成長を期待されているのは3割に過ぎないなど、上司からの期待は総じて、高いとは言えない。全く「期待されていない」と感じている女性が2割弱、「分からない」という女性が2割弱という結果からも、50代女性社員の役割が不明確な職場も多いことが示唆される。