(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は14日、最近の米経済が「目覚ましく良好」に推移しているとし、慎重なペースで政策金利を引き下げる余地が生じていると述べた。
ダラスでの講演テキストでパウエル議長は「経済は、利下げを急ぐ必要性についていかなるシグナルも発していない」とし、「現在、われわれが目にしている経済の強さにより、慎重な決定を行うことが可能になっている」との見解を示した。
一方、講演後の質疑応答では、景気を減速も加速もさせない中立金利に近づくにつれ、利下げペースを落とす可能性があると指摘した。
経済は非常に好調であり、それは素晴らしいことだとの認識を示した上で、「こうした状況では、慎重に注意深く動くことが求められる。中立水準の範囲に到達、またはそのように考えられる範囲に近づく状況で、正しい判断を下す可能性を高めるために足元のペースを落とすことはあり得る」と述べた。
また経済データが許せば、利下げをゆっくり進めるのが賢明だろうとの認識を示した。
米当局は9月に0.5ポイントの大幅な引き下げ幅で利下げを開始し、先週には0.25ポイントの追加利下げを実施。インフレが引き続き鈍化する限り、追加利下げを行う方針を示唆してきた。パウエル議長の発言は、今後の利下げについて漸進的なアプローチを提唱している他の金融当局者と同様の立場と見受けられる。
今週発表されたデータによると、基調的な米インフレを測る指標は10月になお堅調だった。変動の大きい食品とエネルギーを除くコア消費者物価指数(CPI)は前月比0.3%上昇し、3カ月連続で同率の伸びを示した。

パウエル議長は「インフレ率は、われわれの長期目標である2%にかなり近づいているが、まだそこには至っていない」とした上で、「この仕事をやり遂げる決意だ。労働市場の状況はおおむね均衡し、インフレ期待もかなり安定する中で、インフレ率は時に起伏のある道をたどりながらも、2%の目標に向かって引き続き低下していくと予想している」と述べた。
12月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で利下げが行われる可能性については言及しなかった。
米経済は力強いペースで拡大を続けており、過去2年間の成長率平均は約3%に達した。労働市場は落ち着いてきたが、なお底堅い。
パウエル議長は労働市場について「堅調」だとし、多くの指標から見て、最大限の雇用の実現の責務に沿った「より正常な」水準に戻っているとの見解を示した。
「供給情勢の改善が、足元の力強い経済パフォーマンスを支えてきた」とした上で、「労働力が急速に拡大したほか、過去5年間の生産性上昇率がコロナ禍前の約20年間を上回るペースとなったことで、経済の生産能力が高まり、過熱を伴わずに経済が急成長できている」と論じた。
トランプ氏の政策
トランプ次期大統領が減税や移民、関税に関する選挙公約を実行した場合、来年の金融政策は影響を受ける恐れがある。
質疑応答でパウエル議長は、新たな財政・通商政策を予想して当局が方針を変えるのは時期尚早との従来の主張を繰り返した。「行動する前に、政策変更が経済に及ぼす正味の影響を見極める時間はあると思う」と述べた。
また新たな関税の賦課の場合、貿易相手国・地域の反応が米国への影響を複雑化させ、経済成長に対するマイナスの影響が、財政政策で得られるプラス効果に逆行する可能性があると強調した。
「報復措置はどうなるのかということだ」とした上で「しかも、それは景気を支えるような財政政策が実施されるとみられる時期と重なるだろう。正味の影響は実際にどうなるだろうか」と語りかけた。
原題:Fed’s Powell Says No Need to Hurry Rate Cuts With Economy Strong、Powell: If Data Let Us Go Slower, Seems Like Smart Thing to Do、Fed’s Powell Says No Need to Hurry Rate Cuts With Economy Strong、(抜粋)
(中見出し以降に背景や発言を追加して更新します)
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