欧州中央銀行(ECB)が10月に利下げを決定した主な理由は、リスク管理だった。14日公表された10月の政策委員会会合の議事要旨から分かった。

議事要旨は「経済活動の指標が示す成長減速とインフレの下振れが一時的なものであることが判明した場合、現時点での利下げは結果的に、12月の引き下げを前倒ししただけとなる可能性がある」とし、「そのため利下げに伴うリスクはほとんどない。特に利下げ後も金利が景気抑制的な水準にとどまり、ディスインフレのプロセスを継続的に支えることを考慮すると、そのリスクはさらに低くなる」と説明した。

10月に利下げを前倒しするECBの決定は、ユーロ圏の成長見通しに対する懸念が高まり、インフレ率が予想以上に低下したことへの対応だ。次回の12月についてはその後、0.5ポイント利下げもあり得るとの声も聞かれるようになっているが、0.25ポイント利下げがなお最も可能性が高いとみられている。

フィンランド中銀のレーン総裁は今週、ブルームバーグテレビジョンに対し、ディスインフレは「順調に進行中」であり、成長見通しは「弱まりつつある様子」だと述べ、12月にも再び緩和を実施する根拠が強まっていると指摘した。ラトビア中銀のカザークス総裁は、段階的な利下げが現時点では「最も適切」だとの考えを示した。

議事要旨によると、その他の主なコメントは以下の通り。

金利について

  • 「最近のデータがより持続的な弱さを示し、ディスインフレの進行加速を裏付けるものであれば、現時点の利下げはマクロ経済状況の変化に即した政策調整として正当化される」
    • 「この議論はまた、現時点で利下げをしてそれが時期尚早だったことが判明するリスクよりも、利下げを先延ばしして対応が遅れるリスクの方が高いことを意味する」
  • 「数人のメンバーは当初、より多くの情報を集め、インフレの中期的見通しに関する包括的な評価が得られる12月まで待つことが望ましいとの見解を示した」
    • 「しかし、これらのメンバーもいま利下げを行いリスクを予防的に管理する必要性を認識しており、そのため利下げ提案を支持する用意があると表明した」
  • 「特定の金利軌道への事前のコミットメントはあってはならない。必要に応じて対応できるように、今後について完全な選択性が必要であることがあらためて指摘された」
  • 「景気抑制の度合いをどの程度のスピードで減らすべきかは、入手するデータ次第であると強調された。入手データは引き続き、反応関数の確立された3つの要素すべてに対して評価されるべきだ」
  • 「金利が中立的な領域に近づくほど、金融政策自体がディスインフレのペースを鈍化させる要因にならないよう、より慎重になる必要があると主張された」

インフレについて

  • 「インフレが速やかに2%という中期的な目標に収束するだろうという確信が強まっている」
  • 「ディスインフレ傾向はより強く、しっかりしたものとなり、勢いを増している」
  • 「サービス価格のインフレにも改善の萌芽(ほうが)が見られ、サービス価格および域内インフレが今後1年に大幅に低下する兆候も見られる」

経済について

  • 「新たなハードデータが限定的で矛盾するシグナルを発する中で、ネガティブなニュースは主にソフトデータに起因している。その例として、8月の工業生産は上振れのサプライズで、9月の購買担当者調査の弱さと対照的だった」
  • 「経済活動の消費主導型成長という予測については疑問が呈された。データは貯蓄率の大幅な上昇を示唆している」
  • 「労働市場は依然として堅調だった。失業率は8月に歴史的低水準である6.4%にとどまった。一方、調査では雇用の伸び鈍化と労働需要のさらなる減退が示された」
    • 「一部の国では企業が人員削減に乗り出しており、転換点に達するのではないかという懸念が示された」

原題:ECB Officials Saw Risk Management as Key for October Rate Cut(抜粋)

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