米国のトランプ次期大統領は、多くのクリーンエネルギー関連の奨励策を廃止または骨抜きにする計画を明らかにしている。新たな気候変動関連技術への連邦政府の支援が減少するとの見通しはすでに、一部投資家にとって減少分を埋め合わせる動機付けになっている。

炭素回収からグリーン水素まで、気候技術の分野はここ数年、連邦政府の税制優遇措置や融資、助成金から多くの恩恵を受けてきた。こうした資金源の行方が流動的となる中、投資家は「トランプ1.0」の戦略を再検討している。

「トランプ氏が前回大統領だった時、政府が撤退した分野のギャップを埋めるため、気候関連分野の一部に民間資本が流入する動きが加速した。今回も同じことが起きると期待している」と、ベンチャー企業モントーク・クライメートの共同創業者兼最高経営責任者(CEO)、フィリップ・クリム氏はコメント。「資本が枯渇し始めているところに関与する好機だと考えている」と述べた。

現在の投資環境は、ゼロ金利政策下で記録的な気候技術投資が行われた第1次トランプ政権の期間とは大きく異なる。データ提供会社ピッチブックによると、米国のベンチャーキャピタルによるそうした分野への資金提供は第1次政権の間に増加しており、2021年には300億ドル(約4兆6000億円)近くとピークに達した。だが人工知能(AI)への投資家の関心の高まりも影響し、世界の気候技術関連企業への資金提供は、ブルームバーグNEF(BNEF)によると、今年約50%減少する見通しだ。

一部投資家は、マクロ経済やガバナンス関連の不確実性があるにもかかわらず、トランプ氏の返り咲きを好機と捉えている。「政策の変動は大きい。ジェットコースターのようなものだ」と、クリーンエナジー・ベンチャーズの共同創業者兼マネジングパートナー、デビッド・ミラー氏は指摘。「投資戦略としては、不確実性が高いとみられる時期に安く投資し、高値で売却するのが良い」と話した。

超党派の優先事項

米エネルギー省融資プログラム局(LPO)やインフレ抑制法(IRA)といったクリーンエネルギーのエコシステムの重要な部分を巡り、トランプ氏がどのような計画を持つのかまだ明らかになっていない。それでも「トランプ氏勝利は、気候技術への連邦政府の支援の遅れにほぼ確実につながるだろう」とコラボレーティブ・ファンドのパートナー、ソフィー・バカラー氏は指摘。「IRAに基づく非常に手厚い補助金の多くが、批判の的となる可能性が高い」とした。

「最悪の事態が連邦レベルで起きた」場合には年金基金などの機関投資家が資金を投入する可能性があると、トバ・キャピタルのパートナー、スーザン・スー氏は指摘。「世界には資金があふれている。単に、この分野にほんの少し多めに投資する意欲のある者が誰なのかという問題だ」と話す。

一方で気候技術の売り込み方も変化している。投資家、創業者ともに、もはやサステナビリティーや脱炭素化について語ることはなく、むしろ雇用や製造業、国内回帰、中国との競争の必要性について話している。これらは超党派の優先事項だ。

トランプ氏が米国をパリ協定から離脱させ二国間協議を混乱させそうなことから、気候変動対策に関する国際情勢は暗く見えると、コングルーエント・ベンチャーズの共同創業者兼マネジングパートナー、エイブ・ヨケル氏は話した。だが気候技術への投資に関してはもっと楽観的で、「われわれは以前も同じ経験をしている」と述べた。

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原題:Trump Return Set to Revive Investment in Climate Tech Startups(抜粋)

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