セブン&アイ・ホールディングスがセブン銀行を連結対象から外す計画に関して、傘下のスーパー2社の保有分を売却し、グループでの持ち分を今期(2025年2月期)中にも約38%に引き下げる検討をしていることが、複数の関係者への取材で分かった。

セブン銀が6月に提出した有価証券報告書によると、セブン&アイはグループ全体でセブン銀株の46.4%を保有している。関係者によると、このうち傘下のイトーヨーカ堂とヨークベニマルが保有する約7.8%分を売却する方針だ。足元の時価総額(約3900億円)から単純計算すると、約300億円分を放出することになる。

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セブン銀の非連結化に向けて具体的な手法の検討が進んでいることは、セブン&アイがコンビニ事業集中に向けて歩みを進めていることの証左だ。同社は、カナダのアリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受ける中、従来の多角化戦略から脱却する姿勢を打ち出してきた。

スーパー事業などを中間持ち株会社に集約し外部資本を呼び込むほか、セブン銀の非連結化が実現すれば、構造改革は一定程度前進すると言えそうだ。ただ足元の株価は足元では2205円と、クシュタールが提示した18.19ドル(約2800円)とは依然として開きがある。構造改革案が業績に結び付くかどうか株主は見極めようとしており、理解を得られるかは不透明だ。

セブン&アイの広報担当者にコメントを求めたが、得られていない。セブン銀の広報担当者はコメントを控えた。

「脱ATM依存」加速へ

セブン銀にとっては、セブン&アイの構造改革に巻き込まれるかたちだが、非連結化はセブン銀の成長を加速させる一手になるかもしれない。セブン&アイ色が薄まれば、思い切った判断ができるようになる可能性もある。

銀行業界は、日本銀行による17年ぶりの利上げで稼ぐ機会を得たが、JR東日本など、非金融系企業の参入などで競争が激化し、大きな環境変化にさらされている。現金自動預払機(ATM)を中核としてきたセブン銀も、単なる「ATM会社」からの脱却を急いでいる。

今年7月に公表した統合報告書では、ATMに次ぐ成長領域の拡大として、リテール・法人戦略、海外事業を挙げた。財務目標達成のため、新たな企業の合併・買収(M&A)も含めてさまざまな可能性を想定するという。「金利ある世界」で商機をつかもうと、ローンなどのストックビジネスにも注力する。

セブン銀は01年に創業し、国内に約2万7000台のATMを設置するほか、640社の金融機関などと提携する。

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