(ブルームバーグ):米連邦最高裁は人工妊娠中絶の権利を認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」(ロー判決)を覆したが、これにより米国における中絶を巡る長年の論争が終わったわけではなく、むしろその決着は各州に委ねられた。
最高裁による2022年6月の「ドブス対ジャクソン女性保健機構判決」(ドブス判決)によって1973年以来施行されていた憲法上の、ひいては全米的な中絶に対する保護が撤回され、保守派の知事や議会は長年求めてきた各州での中絶を規制する権限を手中に収めた。
現在、中絶できるかどうかは住んでいる州によって大きく左右される。
このため5日投票の大統領選では中絶問題が重要な争点となっている。中絶に関する米国民の考えが、米大統領に誰が来年就任するかを決める要因になり得る。
民主党候補のハリス副大統領は中絶の権利を強く支持する一方、共和党候補のトランプ前大統領はロー判決の破棄を自身の手柄としている。さらに、少なくとも10州における住民投票で、有権者は自身が住む地域での中絶の権利について直接的に意見を表明することになる。
なぜ中絶が大統領選の大きな争点に
今回はドブス判決以降で初の大統領選となる。世論調査によれば、大多数の米国民がドブス判決に反対している。
現在、15-44歳の女性約2500万人がドブス判決以前より中絶規制が強化された州に住んでいる。
中絶を大統領選最大の争点に挙げた有権者数は、今年に入り「スイングステート」と呼ばれる一握りの激戦州で増加した。米世論調査団体ピュー・リサーチ・センターによると、全ての、またはほとんどの場合に中絶が合法化されるべきと考える米成人の割合は全体的に近年、比較的安定しており、5人中3人程度となっている。
中絶は大統領選にどのような影響を及ぼすか
ハリス氏は中絶の権利を全米で認め、ロー判決で保障された憲法上の保護を復活させる法律を支持している。
ただ、これは野心的な目標で、仮に民主党が連邦議会選で上下両院の過半数を確保できたとしても、共和党は上院でフィリバスターと呼ばれる議事妨害を行い、そのような法案を阻止する可能性がある。
ハリス氏は中絶の権利を認める法律可決に向けフィリバスターの廃止を支持しているが、上院の規則を変更するのは困難だ。
ハリス氏はドブス判決への反対をトランプ氏への攻撃材料として利用している。トランプ氏は、ドブス判決を下した最高裁判事3人を任命したとして、同判決に関する功績を自らのものだと主張している。
一方で、トランプ氏は中絶に関する規制は各州に委ねたいと述べており、10月1日には連邦レベルでの中絶禁止には拒否権を行使すると言明した。以前は妊娠15週目までの中絶を全国的に規制する案への支持を示唆していた。
ドブス判決以降、各州は何を行ったのか
中絶の権利を支持する研究機関ガットマッカー研究所によると、現在、13州でほぼ全ての中絶が禁止されている。別の3州では妊娠6週目以降の中絶を厳しく制限。妊娠6週目時点では妊娠していることに気付かない人も多い。
アラバマやテキサス、テネシーなど一部の州では、母親に深刻な医学的リスクがある場合のみを除き、性的暴行や近親姦の場合でも中絶が禁止されている。医療従事者がこれらの法律に違反すると重罪となり、罰金や実刑判決を受ける可能性がある。一部の法律は中絶を犯罪とするだけでなく、胎児に法的権利を与えている。
州レベルで新たに導入された規制の一部は、法廷で争われている。
10州の住民投票で何が問われるのか
5日の住民投票で、10州の有権者は、それぞれの州で中絶に関する基本的権利の確立を支持するかどうか問われることになる。これらの州にはドブス判決後に中絶へのアクセスを制限したアリゾナ、フロリダ両州が含まれる。ネブラスカ州では、性的暴行や近親姦、または医療上の緊急事態を除き、妊娠初期以降の中絶を禁止する別の法案についても有権者が検討することになる。
ドブス判決以降、カリフォルニア州とミシガン州、オハイオ州の住民投票では中絶の権利が支持された。
原題:Why Abortion Is a Hot US Election Issue: QuickTake (Correct)(抜粋)
--取材協力:Rebecca Greenfield.
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