バイデン米政権は24日公表した国家安全保障に関する新たな覚書で、軍事および情報収集目的での人工知能(AI)の採用を加速させる必要があると指摘し、各政府機関に強力なシステムを安全な方法で速やかに展開するよう指示した。

サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は同日、ワシントンの国防大学で講演し、米国はリスクを管理しながらAIにおける優位性を広げていく必要があると呼びかけた。

急速に進化するAIは、核物理学からロケット工学、航空機などの探知回避能力に至るあらゆる分野に影響を及ぼす可能性があるとの考えを示すとともに、「国家安全保障計画におけるAIの展開を、米国のライバルよりも迅速に行わなければならない」と述べた。

サリバン氏は、敵対国は米国の「軍事力と情報収集能力を追い越そうと絶え間なく探求している」が、その一方で、その使用に関し敵対する側は米国と同じ原則に縛られることはないだろうとも警告した。

覚書について発表前に匿名を条件に説明した政府高官によれば、殺傷力を伴う方法でAIを展開しようとする試みは、中国が最先端の取り組みを急速に進める動きに米国が後れを取るリスクがあるという懸念から生じた。

サリバン氏は宇宙や海面下での活動などにおける米国の優位性はAIによって「消滅」する恐れがあると警鐘を鳴らし、強力なシステムを利用するためAI開発者と「より緊密」に協力するよう国防関係者に促した。

同氏によると、米国が最近行った中国との一連の会合でAIに関する協力分野が浮上したものの、中国が「AIを駆使して自国民を弾圧し、偽情報を拡散し、米国と米同盟国の安全保障を脅かし続けている」ことに対する米国の深い懸念を和らげることはできなかったという。

あまりにも複雑

覚書に関するホワイトハウスの概要報告は、「競争相手は米国のAIにおけるリーダーシップを覆そうとしており、米国の技術を盗むために経済的および技術的なスパイ行為している」と分析。

その上で、米政府はサイバーセキュリティーおよびスパイ対策の情報をAI開発者にタイムリーに提供し、半導体サプライチェーンの安全と分散化を向上させるため介入すると説明した。

国連のグテレス事務総長は2026年までに自律型致死兵器システムを禁止する取り決めを締結するよう各国に呼びかけているが、米国はこれに参加しない見通し。

米政権高官は、米国の安全保障コミュニティーは戦場や情報収集目的でのAI利用に関する安全上の懸念を強く認識していると主張。米国のAIシステムは認定プロセスを経る必要があり、新たな技術の採用には課題もあるだろうと語った。

覚書は、テクノロジー業界外の大学やその他組織におけるAI研究者の活動を強化する重要性を強調。ホワイトハウスは概要報告で、「AIの進化はあまりにも速く、あまりにも複雑であるため、大企業の小さな集団だけに頼るわけにはいかない」としている。

原題:White House Urges Agencies to Adopt AI for Military, Spy Use (1)(抜粋)

--取材協力:Mackenzie Hawkins、Courtney Rozen、Jenny Leonard.

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