全国の物価の先行指標となる9月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は、前年比上昇率が4カ月ぶりに縮小した。エネルギー価格の伸び鈍化が主因。日本銀行が目標とする2%台は4カ月連続で維持した。総務省が27日に発表した。

コアCPIは前年比2.0%上昇と前月(2.4%上昇)の伸びを下回った。市場予想と一致した。電気・都市ガス料金への政府の補助金再開でエネルギーの上昇率が9.5%に縮小。一方、米の値上がりが続き、生鮮食品を除く食料は2.8%上昇と2カ月連続で伸びが拡大した。生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは1.6%上昇と前月から横ばいで、市場予想と同じだった。

 

日銀は経済・物価が見通しに沿って推移すれば利上げを続けていく姿勢を堅持する一方、米国経済の先行き不透明感の強まりに警戒感を強めている。大幅な円安修正に伴う物価上振れリスクの後退もあり、植田和男総裁は政策判断に「時間的な余裕はある」としている。足元で早期の追加利上げ観測は後退しているが、今回の結果を踏まえれば政策正常化路線は維持される可能性が大きい。

野村証券の岡崎康平チーフマーケットエコノミストは、「今回はエネルギーが政策効果で下がっている」とし、注目するサービス価格は内需の回復に対する期待の高まりと決して矛盾しない状態が続いていると指摘。その上で、日銀が目指している賃金・物価の好循環は「基本的には日銀の見通しに沿っている」との見方を示した。

賃金動向を反映しやすいサービス価格は0.6%上昇と、前月の0.7%上昇からプラス幅が縮小した。宿泊料の伸びが縮小したことが影響した。日銀は2%物価目標の持続的・安定的な実現に向けて賃金・物価の好循環を重視している。今年の春闘で平均賃上げ率が33年ぶりに5%を超える中、賃上げコストを価格に転嫁する動きの広がりが注目を集めている。

総務省の説明

  • 「酷暑乗り切り緊急支援」に伴うコアCPIへの影響はマイナス0.54ポイント。同対策がなかった場合のコアCPIは前年比2.5%上昇
  • 米類は41.4%上昇、前月からの寄与度差が0.07ポイント。米類の上昇がなければ、生鮮食品を除く食料の寄与度差はマイナス
  • 家庭用耐久財と宿泊料はマイナス寄与。家庭用耐久財は電気炊飯器のモデルチェンジが昨年とタイミングがずれたのが要因。宿泊料は目立った要因はなく、引き続き高水準が続いているとの認識

(エコノミストコメントや総務省の説明、チャートを追加して更新しました)

--取材協力:氏兼敬子.

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