(ブルームバーグ):消費財を扱う中国大手企業の2社が記録的な株の売り浴びせに遭い、同国の大富豪である両社の創業者2人が合わせて180億ドル(約2兆6000億円)強を失った。中国経済の健全性に投資家が懸念を深める状況が浮き彫りになった。
ブルームバーグ・ビリオネア指数によれば、中国のボトルウオーターメーカー、農夫山泉の創業者で同国の長者番付1位の鍾睒睒氏は、28日の香港株式市場で同社の株価が一時12.9%下落したことで約40億ドルを失い、総資産額が455億ドルに減った。
一方、格安サイト「Temu(ティームー)」を運営するPDDホールディングスの創業者、黄崢氏の資産は26日に141億ドル減少した。売り上げの伸び鈍化が避けられないとの同社の発表を受け、株価が上場以来最大の下げを演じた。その結果、ブルームバーグの長者番付で今月8日に鍾氏を抜いてトップになったばかりの黄氏は4位に後退した。
PDDの株価は27日にさらに4.1%下落し、黄氏は14億ドルを失った。中国のゲーム・ソーシャルメディア大手、テンセント・ホールディングス(騰訊)の共同創業者、馬化騰(ポニー・マー)氏が現在、同番付で2位となっている。

富豪2人の資産急減は中国の消費市場への長期的信頼感が揺らいでいる現状を際立たせる。中国の景気低迷で世界の大手企業の多くが需要減速に直面している。節約志向を強める消費者を呼び込むため、企業は価格競争を繰り広げ、農夫山泉は精製水の新商品を1元(約20円)未満で発売した。
ユニオン・バンケール・プリベのマネジングディレクター、ベイ・サーン・リン氏は「農夫山泉やPDDのような消費財を扱う企業の業績が振るわないとすれば、おそらく中国経済は人々が考えているより悪い状態にある。需要が底堅いと思われる飲料やコストパフォーマンスの高い製品を手掛けるセクターで、両社は代表的企業だ」と説明した。
両社は今年に入り、評判を落とす問題に直面した。 農夫山泉は主要な競合企業の杭州娃哈哈集団の創業者、宗慶後氏が2月25日に死去した後、競合企業に対し優位に立つために用いた策略が非難されるなどネット上で厳しい批判にさらされた。その数カ月後、香港消費者委員会が報告書で同社の飲料水の品質を疑問視したが、その見解は後に撤回された。
PDDを巡っては先月、同社が科す不公平な罰則が強化されていることに抗議する業者の数百人が中国南部の同社オフィス前で集会を開いた。同社のTemuに対する欧州連合(EU)などの規制当局の監視の目も厳しくなっている。
農夫山泉のボトルウオーター売上高は今年上期に18%減少。総売上高に占める割合は昨年の約48%から39%に低下した。2月末以降の同社と鍾氏に対する批判の高まりが背景にある。
原題:China’s Two Richest People Lose Billions in Consumer Stock Rout(抜粋)
--取材協力:Lulu Shen.
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