セブン&アイ・ホールディングスはアリマンタシォン・クシュタールからの買収提案後に、より強い外資規制の対象への格上げを政府に求めた。国の判断によって、日本企業改革への政府の本気度が世界に示されることになる。

7&iHDが政府に対し、「外国為替及び外国貿易法」(外為法)で最も規制が厳しい「コア業種」分類への格上げを申請したと、ブルームバーグは27日に報じた。軍事技術の流出など安全保障上の問題につながる恐れなどから、外資企業による日本企業の買収や出資は外為法で一定の規制がかけられている。

仮に認められればクシュタールにとって買収のハードルが上がる可能性がある。国の判断は、外資企業による買収が難しいとされてきた日本が変化するかどうかを見定める試金石として注目されている。財務省や経済産業省が、分類を変更するかどうかをいつ決めるかは明らかになっていない。

アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは、クシュタールによる買収は難しいというコンセンサスがあったとした上で、報道通りにコア業種への格上げを求めているのであれば、「買収実現の可能性はさらに後退した」と指摘する。

行動指針

財務省は、規制の対象企業を定期的に見直している。手続きに詳しい関係者によると、6月に同省が東京証券取引所を通じて上場企業に見直しのための調査票を送付。セブン&iHDは23日の期限までに回答したという。

日本企業の取締役会は長い間、株主価値よりも安定性を優先してきた。日本政府も過去に保護主義的な傾向を示してきたが、変化もみられる。昨年8月に公表した「企業買収の行動指針」では買収提案が具体的で正当性のある内容だった場合、企業は「真摯(しんし)な検討」をするべきと促し、障壁を取り除こうという努力がうかがえる。

指針では、望ましい買収が活発に行われることは、「リソース分配の最適化機能の発揮や、業界再編の進展、資本効率が低い企業が多い日本の資本市場における健全な新陳代謝にも資する」としている。

一方で外為法は「ディールキラー」の面もある。2008年の英投資ファンドのザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンドによる電力卸最大手の電源開発(Jパワー)株の追加取得計画がある。政府が電力の安定供給や原子力政策に影響しかねないとして中止を命令した。

政府は日本企業改革の歩みを止めるのか、あるいはさらなる前進につながる判断を下すのか。

いずれにせよ、7&iHDに対してさらなる企業価値向上を求める外圧は高まるだろう。CLSAの日本担当エクイティ・ストラテジストであるニコラス・スミス氏は、クシュタールの大胆な買収アプローチは、好むと好まざるとにかかわらず、日本企業が進化していることを示すものでもあると指摘する。

「正しいことをしようとする企業には勢いがある」とスミス氏は述べた上で、「企業改革の動きは全体では政府の支持を得ている」と付け加えた。

 

原題:Seven & I Seeking Protection Tests Japan’s Appetite for Reform(抜粋)

--取材協力:田村康剛、吉田昂、鈴木英樹、谷口崇子.

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