人間社会の変化も増加要因に
アライグマは空き家の屋根裏などに住みつくことが多いため、空き家が増えていることも増加の原因のひとつといえます。
大森学芸員
「山口県内でそういった環境がどんどん広がるとアライグマにとって好適な環境が広がっているということですので、人間社会の変化もきちんと認識する必要があると思います」
平山台果樹団地では、県とともにアライグマを調査し、捕まえたアライグマにGPSを取り付けてその行動を調べました。その結果、果樹園から10キロほど離れた空き家から来ていることが分かりました。

上杉農園・上杉晋也さん
「タヌキも捕まえて調べたんですけど、タヌキはだいたい1キロくらい。アライグマの行動範囲がすごく広いことにびっくりしてですね」
電気柵など対策をマニュアル化
アライグマの侵入を防ぐため有効な対策を探っています。上杉農園では、実験的に電気柵を設置しました。

上杉さん
「網状の中に電気柵が入っているので小動物でも侵入しにくいように、さらにサルも入らないように上段にも3本電気柵が付けられています」
2年間の実験の結果害獣被害はゼロで、効果があることが分かりました。県はこうした調査をもとに被害対策マニュアルを去年から公開しています。
上杉さん
「痛いからここは来ちゃダメだよと、害獣があそこは危ないから行かない方がいいと教えるしかない。害獣との共存には人間がおりの中に入らなきゃいけない、大げさな話ね」
もとはペットが野生化したもの。人間の「勝手」で悪者にさせられたアライグマではありますが、日本中で農業被害をもたらす存在となりつつあります。
県内の駆除業者によると、家屋侵入も5年前頃から増えているということです。家屋に入ってしまうと糞や尿による悪臭やカビ、家屋の破損も考えられます。上杉さんが神主をしている神社にも住みついていて、アライグマが持っていたダニに噛まれる被害もあったそうです。
山口県立博物館の大森さんによると、野生動物対策には「捕獲対策」と合わせて、電気柵や侵入防止柵を付けて畑や民家を守る「被害防除」、草を刈るなどして動物を住みにくくしたり、餌になるものを伐採する「生息地管理」の3つをバランスよく行う必要があるということです。