シナリオを“具現化”する撮影
Q庄内の現場を探したときにこだわったことは?
こだわったといいますか、常々やっぱりシナリオが求めていることを具現化するのがあの撮影行為ですから、あの俳優のキャスティングと同じで、やっぱりシナリオが求めてることが一番なんですね。
逆にラッキーだったのは準備期間が1年余計にもらえたってことですね。ですので必要な白鳥のカットも一昨年撮ることができましたし、見つかるロケセットやロケ場所も妥協することなく。
正直一番苦労したのは脚本家がシナリオハンティングして庄内に行きましてね、主人公が恋する女性の職場を養豚場だと定めたんです。満島ひかりさんが演じてる役なんですけれども、その養豚場があるならば食肉加工場でその父親がかつて働いていた。
これも本人同士が確認し合ったことではなくて、その役の人物が、脚本としての繋がり連鎖のようなものですよね。
ところがこの食肉加工場の撮影ってのは困難を極めるわけですね。当然一切の異物が混じってはならない。食べ物ですし、もうカメラを入れる。録音機材を入れる。なんていうのは言ってみればもう考えただけでも先方にしてみればぞっとする行為ではないですか。
俳優も当然そこに入るときにはもう全てを消毒し、髪の毛1本落ちないようにしつらえてマスクをして手袋をして、長靴を洗って入っていくわけですけども、そのままの姿だったらば、誰がいつでも同じなんじゃないかっていう。それはあの冗談にしてもですね、やっぱりそうはいかないわけですね。
それでいろいろ知恵を絞って、食肉加工の現場と言ってれば映像的に隔たりのない場所を探して、そこで別の工場を使ってそう見せていこうっていうようなことを丸山さんにお願いした。
かの有名なオランダせんべいをお作りなってる酒田米菓さんの一部を使用したんです。