町の特色でもあったひとつの形が、2023年度末でその役目を終えます。開館から34年が経った富山県砺波市の庄川美術館の最後の企画展。これまでの軌跡を振り返ります。

富山県砺波市庄川町にある松村外次郎記念庄川美術館。

ここは旧庄川町出身で、日本彫刻の一端を担った松村外次郎が作品を寄贈したことがきっかけで1989年に開館しました。

地域に寄り添い34年の歳月が経ち建物は老朽化。3月末で閉館し、解体されることが決まっています。

松村外次郎記念庄川美術館 末永忠宏 学芸員:
「非常に身近な存在であったと思います。展覧会を見るだけではなくて、音楽を聴くという催しや作者に話をうかがうというような行事も織り交ぜながら、非常に身近に美術をとらえていただく。楽しんでいただくような工夫をやってこられた、そういう歴史があります」

最後の企画展「さよなら庄川美術館展」には、美術館の軌跡をたどる作品が並びます。

開館当初から講師として油絵などの講座を開いてきた藤森兼明さんの作品

末永忠宏 学芸員:
「人物の顔と手ですよね。そういうところが非常にリアルで、本当に絵の中に存在するような迫真の描写です」

開館当初から展示してきた松村外次郎の作品。

末永忠宏 学芸員:
「これは丸太を縦に半分に割った素材でして、男女が愛し合う姿を象徴的に表した木彫の作品というのは少ないのですが、その分思い入れの強い作品になっていると思います」

親鳥がヒナを守りながら、餌を与える場面。子を思う親の愛は変わらないことを表現しています。

末永忠宏 学芸員:
「いろいろところで助け合いながら展覧会ができてきたのです。距離感がとても密で、見る側もアットホームな感じがします。歴史は残りますから、みなさんの記憶にとどめていただければ、ありがたいなと思います」

町の小さな美術館は地域とともに歩み、故郷を想う外次郎の思いは訪れた人の記憶に残ります。