近年相次ぐ地震などの自然災害。ペットを飼っている人にとって、災害時の避難方法や避難所での生活は極めて切実な問題です。
2024年の能登半島地震では、被災地で多くのペットと飼い主が同行避難できず、車中泊になるなど、厳しい状況に直面しました。
これを受け、公益社団法人富山県獣医師会は県に対し、災害時に「動物同行避難ができる避難所」の事前指定などを求める要望書を提出しました。現場で支援にあたった獣医師たちの証言から、避難所の課題や、飼い主が今すぐ始めるべき「命を守る事前準備」の現実が見えてきました。

避難所に行けない? 能登半島地震で浮き彫りになった「同行避難」の壁
近年、地震や大雨などの災害が増えており、ペットとの避難は飼い主にとって切実な問題となっています。
2024年の能登半島地震では、その不安が現実のものとなり、避難所の受け入れ体制をめぐる問題が浮き彫りとなりました。
能登半島地震での県内の動物災害対応について富山県獣医師会に取材したところ、現地の動物病院、ボランティア、厚生センター職員等がいち早く行動したため、被害の大きかった氷見市でも、協定に基づく県からの救助・支援要請には至らなかったといいます。
富山県獣医師会が石川県獣医師会の要請を受けて被災地(石川県)に入ったのは、発災から1か月後。その頃には怪我の治療を必要とするペットはほとんどおらず、身体検査や爪切りなどの手入れ、そして飼い主たちの話を聞くことが主な支援だったといいます。

能登半島地震の被災地へ支援に入った富山県獣医師会の荒井靖子獣医師は、当時の現場の様子をこう振り返ります。
荒井靖子獣医師
「珠洲へ2回行ったんですけど、同行避難できる避難所はなくて。車中泊だよという感じでした。(避難所へ)連れて行っている人もいるんですけど、何日かはいたけど居たたまれなくて出てきたって。周囲に面と向かって拒否されたわけではなくても、犬や猫を連れていることの居たたまれなさから、半壊した自宅や車中泊を続けているケースが多くありました」

「同行避難」は、あくまでペットとともに避難所まで安全に逃げる避難行動を指しており、避難所内で人とペットの同居を意味するものではありません。また、避難所内でペットを飼養管理することを指す「同伴避難」についても、同室で過ごせることを意味するものではなく、避難所によって状況は異なります。
特に受け入れ設備やルールの整っていない避難所では、動物が嫌いな人、アレルギーを持つ人への配慮から、結果として飼い主が避難所での避難生活自体を諦めてしまうケースが少なくありません。
荒井靖子獣医師
「家に『危険』と書いた赤い紙が貼ってある家で寝泊まりしているおばあちゃんがいるわけです。自分たちの健康も心配だけど『この子がいるから頑張らないと』って。犬だからとか猫とかいうんじゃなくて、家族だからこの子のために頑張るよと。犬猫がいるために避難所に行けないとか、壊れた家にずっと居続けているという話を聞いて、ペットというけど、でも結局は人(への支援)なんだよなというのは思いました」

国の防災基本計画はペットとの避難について、「動物愛護」の観点からではなく、「被災者の救護・支援」の観点から対応を実施するという考え方に変わってきています。
富山県獣医師会・松村隆治会長
「防災基本計画では、従来の災害時動物救護に加えて『伴侶動物の飼い主に対する人道支援だ』という考え方になってきたんですよね。要するにペットを救う動物のための救護支援じゃなくて、それを飼っている人のための救護なんだと。動物と言っても結局人、動物を介して人を助けるというか人のためになっている。そういう風にみなさんにも理解していただければと思います」

ペットの災害対策は「被災者支援」そのものです。一人ひとりの認識が変わることで避難所の受け入れ環境や対応も少しずつ変化していくと考えられます。
車中泊を余儀なくされる飼い主たち…この課題に対し、獣医師会が提示した解決策とは。【第2部:避難所の事前指定とスターターキットの課題】へ続く










