母を絶望させた「コロッケ事件」と脳の特性

母親は、被告がファストフード店で働き始める少し前のエピソードも語りました。祖母(母親の母)が亡くなり、喪失感の中にいた母親は、自立のために被告と二人で料理をするようになります。「料理が向いているな」と喜んでいた母。しかしある日、「コロッケ揚げようよ」と声をかけると2階から降りてきてました。そして、一緒に肉じゃがをリメイクしてコロッケを作った際、焦げて割れてしまったものを母が気を遣って食べると、被告は突如として激怒したといいます。

法廷で母親が涙ながらにその時の状況を明かしました。

被告の母親:「『なんでお前がそれを食べるんだ』と言うので、『焦げたから悪いなと思って……』と言うと、『お前はいつも“人のためだ”と言いながら、結局は自分のためじゃないか!』と言って睨まれました」

母親は絶望したといいます。

被告の母親:「ずっと慧大のためを思ってやってきたけど、結局は(自分のため)なんだと、打ちのめされた気持ちになりました。慧大は目をそらさず睨み続けたので、手足が冷たくなって……『このまま死んでしまえればいい』と思いました。慧大は残った皿を投げつけて2階へ上がっていき、私はつらくなって『私をラクにしてくれ』と言ってしまいました」

精神鑑定を担当した医師は、こうした行動の根本に「自閉症スペクトラム(ASD)」があると指摘。他者への共感力や想像力が欠如しがちな脳の特性を周囲から理解されず、虐待やいじめを受け続けたことで形成された「孤立感、他人への怒り、うつ状態、被害感といった二次障害」が、事件の引き金になったと分析しました。