先祖とともに家の“葬式”

去年、解体を決めた後、今野さんは家族やきょうだい、そして先祖の遺影とともに、「家の葬式」を執り行いました。旧津島村の初代村長・今野美寿を輩出するなど、今野家は長年、地域住民のよりどころでもありました。

「あの家使った先祖たちが、何十人、何百人いたか数えていないけど、あの人たちの思いもね…。現場を見て、お墓に報告する義務があるからね」

「家の葬式」から1か月後の去年6月。解体に先立ち、今野さんは環境省との打ち合わせに臨みました。

「解体に着手するときは見たい」と、この場でも伝えた今野さん。環境省の担当者と、同席した業者は「着手時には連絡します」と、明言しました。

原発事故で解体せざるを得なくなった家の最期を見届ける。この日も、今野さんは、自らの希望を念押ししていました。