泣きながら食べた、妻が予約したケーキ

それからは喪失感や悲嘆に押しつぶされながら、葬儀の準備や捜査協力、様々な手続きなど、寝る暇がないぐらいの忙殺の日々が続きました。

妻や子供達が楽しみにしていたクリスマスも、妻の誕生日もお正月も、全く楽しめるものではありませんでした。クリスマスケーキは、妻がお気に入りのケーキ屋さんに早割を利用して既に予約してくれていました。そのケーキを泣きながら家族で食べたのを覚えています。

【事故のドライブレコーダーの映像について】
12月下旬に、当時の事故のドライブレコーダーを見る決心をしました。

映像を見ると、本当にいつもの妻と娘が何気なくイオン前の歩道を歩いていました。そのとき猛スピードで被告人の自動車がつっこんできて、一瞬にして妻がはね飛ばされ、画面から消えていきました。約15メートルもはねとばされたという事実に唖然としました。また警察・検察からも聞いていましたが、娘が巻き込まれなかったことが奇跡だというぐらい、本当にすれすれで娘は助かっていました。

その後の映像では、娘がママ!ママ!ママ!と叫びながら妻の元に走って行く姿がありました。娘は妻の元に近寄り、何か声をかけているように見えました。周囲の方々が出てきて応急処置などが始まろうとする中、それでも妻に近づこうとする娘を周りの人が遠ざけてくれていました。その際に、娘は衝撃で飛んだ妻の靴を拾い大事そうに抱きしめていました。その時のわずか9歳の娘の心情を思うと心が張り裂けそうになります。