「国は責任を放棄した」住民たちの危機感
【解説・TUF記者 木田修作】
今回の方針のうち、帰還困難区域の扱いについては、
▼バリケードなど物理的な防護措置を実施しない立ち入り規制の緩和
▼森林整備の再開
▼「区域から個人へ」という考え方のもと、安全確保を大前提として、活動を自由化する
こうしたことを検討する、というのが今回の方針です。これまで、一律に厳しく区域として規制してきたものを個人が管理するということで、大転換とも言える内容です。
最大の問題は、放射線量の管理や責任が個人に委ねられるという点です。そもそも帰還困難区域は放射線量が高く、被ばくのリスクを避けるために、設けられました。そのリスクを除染などで低減することなく、個人の責任にするとなれば、これまでの政策と矛盾しています。
今回の要請書では、「国は原発事故の極めて困難な事後処理に困って責任を投げ出し、体よく繕うために『区域から個人へ』の理屈をひねり出し、責任を放棄したと怒りをもって受け止めざるを得ない」と強く非難しています。
また、自宅を解体した住民は、「自由に立ち入ることができたならば、自宅は解体しなかった」、別の住民からは、被ばくのリスクが残ることについて、「自分の子どもや孫を連れて来られないような地域に、関係のない誰かが入れるようになるのか」と話していました。
帰還困難区域で取材を続けてきて、ここまで強い言葉が並んだことは、あまり記憶にありません。それは住民の危機感の裏返しだと言えます。少なくとも、国はいまの状態で、この方針を進めてはならないと思いますし、こうした声に向き合う必要があります。













