原発事故の後、甲状腺がんと診断された若者が東京電力を訴えている裁判が17日、東京地裁で行われ、原告の女性が「私たちは論争の材料でも、統計上の数字でもない。命と人権を守る立場に立った判決をお願いしたい」と訴えました。

この裁判は、原発事故当時6歳から16歳だった男女8人が、原発事故の後、甲状腺がんを発症したなどとして、東電に対し、損害賠償を求めているものです。原告全員が、甲状腺の摘出手術を受けています。

17日の裁判では、今年6月に追加提訴で加わった女性が、法廷で意見を述べました。

女性は、高校2年生のときに甲状腺がんが見つかった際、医師から「原発事故の前にできたがんで、事故とは関係ない」と説明を受けたと話しました。しかし、裁判のためにカルテを開示したところ「1回目の検査では、がんどころか結節(しこり)もなかった。わずか2年で、1センチのがんができた」と話し、「『事故前からあった』という医師の発言は嘘だった」と訴えました。この事実を知った後、女性は体調が悪化し、会社を辞めたということです。

そして、過去の自分について「私は『甲状腺がんの子ども』を反原発運動に利用する大人に怒っていた」としながらも、「気づくと、国や東電の都合のいい存在になっていた。胃がねじ切れそうなほど悔しい。命より、国や企業の都合を優先する中で、私たちの存在はなかったことにされていると気づいた」「私たちは論争の材料でも、統計上の数字でもない。体と人生が傷ついた私たちは、社会から透明にされたまま、日々を生きている」と訴えました。そして、裁判所に対し「命と人権を守る立場に立った判決をお願いしたい」と求めました。

裁判後、会見に出席した原告の女性

子どもの甲状腺がんは、一般的に100万人に2人とされていますが、原発事故後に行われた検査などでは、およそ300人に、がんやその疑いが見つかっています。

裁判は、原発事故と甲状腺がんの因果関係をめぐって、主張が対立していて、東電側は争う姿勢です。次の裁判は12月17日に行われます。